お宝小説

□媚熱
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「あ」

温かい布団と腕の中でまどろんでいたら大事なことを思い出した。
まだ夢の中のゾロを起こさないようにそっと抜け出し、服を探す。

確か……ハーブティーを飲みながら新作のレシピを考えていた所を襲われた気がする。
あれよあれよという間に身ぐるみを剥がされて、そのままごにょごにょ。

昨日春一番が吹いて少し春めいてきた。
窓越しに感じていた柔らかい日差しが堪能する間もなく去ってしまった。

「クソエロ毬藻」

額を指で小突く。
むにゃ、と口元が緩んだ気がする。可愛いなと感じてしまうのは末期なのか。

点々と落ちている洋服を身に着けながら冷蔵庫の中身を思い出す。

(そうそう。アレはいい出来だったから、きっと喜んでいただけるはず)

パンツにベルトを通し、ついでにゾロの下着とパ
ンツも畳みインナーを探しているところで太い腕に捕まった。

「どこ行くんだよ」

少し不機嫌な声をしながら首元に吸い付いてくる。

「あ……っ」

簡単に熱が戻りそうになり、慌てて身体を引き離す。

「ったくいつまでも盛ってんじゃねぇよ。
しかも服!素っ裸じゃ風邪引くだろうが!」
「てめぇが勝手に出て行くからいけねぇんだろうが」
「……どんだけ甘えただ、てめぇは」

可愛いなんて少ししか思えない。
絶対言わないけど。

「出て来る。すぐ帰るから」

ちゅっ、とキスを一つ落として髪を撫でる。

「さっさとしろよ。ったくどこ行くんだよ、こんな時間に」
「上の階のユウさん家だよ」
「あー……あの運転がちっと苦手な」
「何でそんなこと知ってんだ?まぁ多分、その人だ」
「何しに行くんだよ」
「今朝、ゴミ捨てに行ったら会ったんだけど、咳しててさ。
辛そうだったから、レモンのはちみつ漬けをおすそ分けしようと思って」
「アレか。そうだな。下手に薬飲むより効くしな」
「んなことねぇけどよ。気休めにはなるだろ?」
「5分な」
「は?」
「行って帰って5分だ。過ぎたら迎えに行く」

文句あっか?と言わんばかりな態度に苦笑いしな
がら、小走りに上の階に向かう。



5分後



「こんのクソエロハゲ毬藻ー!!死ね!!阿寒湖へ帰れ!!」
「うおっ!!何だよいきなり!!」

サンジの本気の蹴りを寸でのところで躱し、体制を整える。

「てめぇのせいで恥かいたじゃねぇか!!」
「何のことだよ!!」
「コレ!!」

首筋を指さす。
そこには紅い所有の証。

「似合うじゃねぇか」
「違う!!そういう問題じゃねぇ!!
てめぇが見境なくつけるから気づかれたじゃねぇか!!」
「見せるためのモンだから気にすんなよ」
「だぁああああ!!!」

頭を抱え悶絶するサンジをわけがわからないという風にゾロが見つめる。

「いいか良く聞け!!
ユウさんはとってもお優しい素敵なレディだから、『ギンさんに見つかったら大変だから隠した方
がいいですよ』ってご忠告下さったんだ!!」
「いや、だから見せつけるために、」
「喋るな!文句言うな!沈め!!」

どちらかと言うと大絶賛横恋慕中のギンの存在に気付いている辺りが流石だと思う。
いい加減未だにぎゃーぎゃー喚いているサンジをどうにか黙らせたい。

「はちみつの、どうだった?」
「お!そうそう、それがさー、今夜は大事な用があるとかで夜更かしの予定なんだって。
それのお伴にお茶で割って飲んで下さるってよー♪」
「良かったな」
「ほんとは早寝したいんだけどねーって笑う顔がキュートでさ。
いやぁ女神を見たね!」
「……そうか、良かったな。んで、夕飯は何食わせてくれんだ?」
「昨日のカレーがいい感じに熟成済みだぜクソダーリン」

途端に機嫌を直した可愛いネコの様な愛しい人。
すぐ温めてやるからなーとキッチンに向かう姿に胸を撫で下ろす。

それにしても…。

「あの女…侮れねぇな」

天井を見上げながら、ポツリと漏した。





END



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