Short Story

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空と海の境界線も溶けあってわからないほど、ポカポカと五月晴れの午後。
トレーニング後の疲れた体を潮風が優しく吹き抜けていく。

後部デッキでメインマストに背を預け、サラサラ揺らぐミカンの葉の音色を聞いていたら何だか急に眠くなってきた。

(…ふわぁ〜…、一眠りでもするか)

何か起こらない限り、船の上では体鍛えるか寝るかしかのないゾロは、眠気に逆らわずそのまま本能に従う。

下の芝生甲板ではしゃいでいるルフィ達の声でさえ、どんなに賑やかであろうともゾロにとっては子守唄でしかない、慣れとは恐ろしいものだ。










しばらくの眠りから目覚めると、甲板で遊んでいたハズのルフィ達の声はなく、そのかわり下のキッチンから声が聞こえる。
煙突からほのかに甘い香りも漂っているので、きっとおやつの時間なんだろう。

(そろそろ行かなきゃ、またコックがうるせーな…)

なんて重い瞼を開けキッチンに降りようと思っていた矢先、コツコツと足音が近づいてきた。

(あ、やべえ…)

すぐに目を開けてもよかったのだが、せっかくコックが起こしに来たのだからと、そのまま動かずにいる事に。

どうせまた腹にかなり強烈な蹴りが一発入るだろうが、ゾロ的にはサンジに蹴り起こされるのも悪くねェなと思っている。慣れとは(以下略

それに、こんな時でもないと昼間サンジと2人っきりになる事はない。
いつも忙しなく動き回っているサンジが自分だけに向いてくれる、貴重な時間でもある。


暴力的な素行とは反し、アイツの纏う空気はフワフワと優しくて、あったかい。

そのあたたかな心地良い気がすぐ側まで近寄って来たので、(そろそろ来るか)と腹にグッと力を込める。
蹴り起こされるのも悪くねェとは言え、なんの構えもないままにあの蹴りを食らうのは、さすがに痛ェ。

ところが。
そのすぐ側の気が、足を振り上げる動作も感じさせねェまま…
変わりに来たのは、唇によく知る柔らかな感触だった。

「…っ!?」

慌てて目を開けると、サンジのドアップが。

「な〜んだ。やっぱり起きてたんじゃねぇか」

「て、てめェ…今…///?」

「おう、たまにはキスでお目覚めすんのも悪くねェだろ?」

シレッとそんな事を言い、しゃがみ込んで二カッと笑う。

(…やっぱりキスされたのか///)

「あぁ、悪くねェ。
けど…なんか変なモンでもくったか?」

いつも『昼間っからイチャイチャ出来るかっ!!』と言われているのだ。
ちょっとでも隙を見て手を出そうモンなら大変な事になるのは既に学習済み。
だから、いくら誰も見てねェからとは言え、まさかコックの方からキスしてくるとは…

やべェ、かなり嬉しい。

「あのな、今日は“キスの日”なんだとよ。とある国で初めてキスシーンが上映された記念日なんだって、さっきロビンちゃんが言ってた」

「へぇ〜」

「だからな、“記念日”の記念だ」

頭にスッと手を回され、サンジは微笑みながら目を閉じて近づき、もう一度キスしてきた。

今度はすぐに離されてしまわないよう、唇をこじ開け舌を押し込む。

(あぁ〜、やべェ。昼間っからコイツとキス出来るなんざ…めちゃくちゃ嬉しいじゃねェか!)

チュ…クチュっと濡れた音と共に鼻から抜ける甘い声。

たまんねェ。

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