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□光
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「イオン様・・っ!」
伸ばした手は、虚しく、空を切る。
そこにあったはずのイオン様の温かい手は、どこにも見当たらず、周りは目が眩む程の暗闇に覆われているだけ。
真っ暗な闇の中に、光のような彼の姿は見当たらない。
・・・それも当然なのかもしれない。
アリエッタは夢を見ていたのだから。
幸せな、夢・・。
アリエッタが見つけた綺麗なお花をイオン様に渡してあげると、イオン様は少しはにかんだような笑顔を見せてくれた。
『ありがとう、アリエッタ。』
そう、アリエッタに言ってくれた事が嬉しくて。
アリエッタの側にいてくれる事が嬉しくて。
イオン様の側に駆け寄ろうとしたその瞬間に、夢は終わりを告げられた。
すぐさっきまで、イオン様が側にいたような感覚、錯覚。
イオン様がアリエッタの側にいるわけなんて、ないのに・・。
「イオン・・さまぁ・・・っ・う・・・アリエッタは、ここにっ・・ここにいます・・・。」
声にならない叫びを上げて。
ただ、泣きじゃくる事しか出来ない。
一人は怖くて、寂しい。
だから、早く迎えにきて。