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□どっちを選ぶ?
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「もぉっ!早くその手を離しなさいよ根暗ッタ〜!!」

「アニスこそ、その手を離してよ!!
それにアリエッタ、根暗じゃないもん…!」

ピンクと茶色の少女の間に挟まれて、鮮やかな緑色の髪の少年は、困ったような笑顔を浮かべて立ちつくしている。

二人の少女達は、それぞれが少年の片手にしがみつき、困った様子の少年を間に挟んで、先程からずっと睨み合いを続けていた。

「イオン様はアリエッタと散歩するんだから!いつもいつもアリエッタの邪魔ばっかり・・・。
アニスの意地悪―っ!」

「アリエッタこそ私の邪魔しないでよ!イオン様と散歩するのはわ―た―し! 」

桃色の髪の少女が、泣きそうな顔で叫べば、今度は茶色の髪を持った少女が、苛ついた表情で怒鳴り返す。

…そして、口論はいつまでも終わらない。

必死に喧嘩を止めるように頼む少年の声も、今の興奮状態にある少女達には届いていないらしい。

導師である少年は、守護役である少女と元守護役であった少女の争いに頭を悩ませながら、必死に呼びかけるより他はなかった。

「止めて下さい!二人とも・・っ、痛っ。」

少女達の争いがヒ―トアップしたおかげで、左右に強く引っ張られた為か、気丈な少年の顔が少しの痛みに歪む。

それに気づき、真っ先に手を離したのは桃色の髪の少女だった。

「あ、ごっ・・ごめんなさい、イオン様。」

私の勝ちだね、とでも言いたげな表情で、少年の手を強く握ったまま勝ち誇る茶色髪の少女の様子を見て、手を離した方の、元より泣き出しそうな顔をしていた少女はますます顔を歪ませる。

このままではまた先程のように口論が始まってしまいそうだったので、ひとまず喧嘩が収まっている今を見計らって、少年はより一層声を張り上げる。

「アニス、アリエッタ!お願いですから喧嘩はもう止めて下さい。
散歩は三人で行く事にしませんか・・?」

「でもでも、イオン様ぁ!私はイオン様と二人っきりがいいんですよぉ!」

「ア・・アリエッタだってイオン様と二人っきりがいい・・です。」

甘えるような表情を見せる少女と対照的に顔を真っ赤にして俯いてしまう少女。

そんな二人に対して少年は諭すように優しく微笑みかける。

「ありがとうございます、アニス。アリエッタ。二人の気持ちは嬉しいんですが、僕は貴女達に僕を巡って喧嘩をして欲しくはありません。
お願いです、今日は三人でという事で我慢してくれないでしょうか・・?」

「うう―・・イオン様がそう言うのなら。」
「イオン様がそう望むのなら、アリエッタはそれに従う…です。」


(その日、ダアトでは不機嫌な表情を浮かべながらも、どこか楽しそうな少女達と少年の姿が目撃されたとか。)

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