お題

□清々しい笑顔
1ページ/1ページ

「そういえばアニス。貴女のトクナガはディストが作ったものでしたね。」

「そうですけど…急にどうしたんですかぁ?
大佐がそんなこと聞くなんて珍しいですね。」

この人形の事についてあれこれと聞いてきた人間は何人もいるし、トクナガの事を不思議に思う人がいても別に大して珍しい事じゃない。

だけど、ル―ク達ならともかく大佐がこのトクナガに対して興味を持つなんて、なんだか随分と珍しい事のように感じた。

「いえ、私ならディストよりかは何倍もマシなものを作れるかと思いまして。」

大佐のその言葉を聞いて、私は先程の質問を私に問いかけた大佐の意図をようやく理解する。

大佐が本当に興味があるのは「トクナガ」ではなく、「ディストが作ったというトクナガ」。

確かに大佐程の天才と言われる頭脳があるのなら、今更トクナガの構造や理論を知りたいなんて思わないだろう。

ああ・・・それにしても、

「大佐ってば本当にディストと仲が良いのか悪いのか分かりませんよね―。」

「何を言うんですかアニス。私があの鼻たれと仲が良かったことなんて一度だってありませんよ?」

逆に清々しい笑顔で、毒のある言葉を吐きながら、目の前の彼は笑う。

「はぁ…大佐は私だけじゃなくて誰に対しても意地悪なんですね―。」

「おや、一つ勘違いをしているようですね、アニス。
これでも貴女に対しての意地悪は愛のある意地悪なんですが。」

元より整った顔の大佐がそう言って微笑めば、私の鼓動を高鳴らせるには充分すぎるほど充分で。

だけど、いつも私ばかりがこうやって照れさせられているのが、なんだか少し悔しいような気がして、私は冷静を装って、にっこりと可愛らしい笑みを作る。

「大佐ってば本当にいい性格してますよね〜。」

「ええ、良く言われます。」

さらりと、私のささやかな嫌みをかわして、目の前の人は相変わらず涼しそうな笑みを崩さない。

やっぱり大佐は私よりも何倍も大人で、冷静で・・今の私がどう頑張っても勝てない人。

いつかそんな大佐も振り回せるような大人になりたいな、と私は目の前の大佐を見つめながら、そう思った。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ