中央編E

□中央編122 副司令官の憂鬱
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副司令官の憂鬱


「なんで?モテるんだから、いいんじゃね?」
「そういう問題ではありません。だったら、ユン少尉でもいいと思いますが!」
「ユンは、ああみえて、好きなヤツいるっぽいし」
「「「えええええ!?」」」
 アンダーソン兄の叫びと同じように、ユンとアンダーソン弟の声が重なった。ユンは頬が真っ赤だ。
「ちょ、な、えっ!?」
「お、ユンの、動揺初めてみたかも」
 ニシシ、とエドワードが笑った。
「カマかけただけ、とか」
 アンダーソン弟の声に、エドワードは笑いながら、
「ううん。確認。ユン、おまえ、気になってるヤツいるだろ」
「否定はしませんけど」
「ほらみろー。ということで、ハーク。おまえ、お見合い、ね☆」
 片目を閉じたエドワードに、アンダーソン兄は頭を痛がるようなしぐさをした。
「弟でもいいと思います」
「いえ、オレでは、つとまりません」
 これ以上ないくらい、綺麗な笑みを浮かべているアンダーソン弟に、くそう、とアンダーソン兄は顔をゆがめた。
「っていうか、貴方がお受けして、お断りすればいいかと思います!」
「ううん。身長180センチ以上がいいんだって。オレ、ちょぉおっとたりねぇし」
 ちょっと、を強調していたエドワードには、あえてなにも言わず。

「だったら、貴方の弟君が…」
「アルは金髪金目だからダメ」
「なんですか、それ」
 ようは、自分がイヤなだけでしょ。と思ったが、
「そうそう、言い忘れてたけど、大総統の命令だからね」
「えええええ!?だ、大総統が直々一介の佐官に、そんなこと命令するはずがないでしょう!?」
「それがさぁ、大総統、色恋話大好きでさぁ。頼むわ〜」
 大総統の名が出たからには、見合い自体をお断りすることもできない。アンダーソン兄は、重い溜息をついた。


「はぁー…」
 いつまでも、溜息をついている兄に、アンダーソン弟は、
「いい加減にしろ」
「だったら、おまえが行け!顔おなじだろうが!」
「いいや、オレの方が、数ミリ顔が細い」
「ミリ単位がわかるものか!」
 ぶつくさ言っている兄の背中を押すように、車から降ろした。
「まぁ、頑張れ。上手くいったら、祝ってやるから。――きっと、司令官が」
 そういうと、手を上げて車を出してしまった。
「んだよ、身内なんだから、一緒に参加しろよ」
 と、思ったが、
「アンダーソン大佐。丁度、一緒になりましたね」
 キラキラ笑顔を向けてやってきた、大総統秘書官に、アンダーソン兄は、目をぱちくりさせた。彼もまた、正装をしている。
「ど、どういうことですか、エルリック大佐」
「兄はなにも言いませんでしたか?お見合いはお見合いでも、これはお見合いパーティなんですよ」
「パーティ?」
「ええ。一緒に、参加しましょう」
 そう、笑顔で言われたが、
「って、大丈夫なんですか?少将はなにも?」
「兄が、行けと」
「それを、普通にお受けされたんですか!?」
「ええ――仕事ですし」
「はあ!?」
 にこり、と頬笑んだアルフォンスから、携帯無線機を渡された。
「“おまもり”です」
 それを耳に装着すると、
『にゃほーハーク君。ご機嫌麗しゅう』
「少将!?」
『君に任務を伝える。イザベル嬢のハートをゲットして来い』
「はああ!?」
『アルは違う女性って決ってるから。おまえは、イザベル嬢』
「って、誰ですか!?」
『自己紹介とかあるだろ。潜入して、とりあえず会ってみろ。では、幸運を祈る』
 それきり、通信が途絶えてしまった。

「どういうことです!?」
 苦笑したアルフォンスは、「まあまあ」と抑え、「では、参りましょうか」と、アンダーソン兄と共に、会場へと入っていった。


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