中央編E

□中央編 おかえし
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おかえし

「兄さん!なにやってんの!!」
 朝から、庭先で怒鳴られて、エドワードは口を尖らせた。
「いないと思ったら、庭で、そんなカッコで遊んでるなんて!信じられない!」
 ますますぷく〜とエドワードの頬が膨らんできた。
 そんなカッコ、と言われたが、昨夜脱ぎ散らかしたパジャマが見当たらなくて、たまたま目に入ったアルフォンスのTシャツを着たら、すっぽりと太股まで隠れたので、そのまま飛び出しただけだ。
 朝から、といったが、エドワードが起きたのは、午前五時ごろ。しばらく、横で眠っていたアルフォンスの横顔を見つめていて、五時半ごろ思いたって、今、ここにいる。
 そして、叱られたのは、午前六時半。一時間ほど、薄着で外にいたのだ。

「こんなに、冷えて!」
 まだ、夏ではない。
初夏とはいえないまだ、晩春と言ったほうが適切か。朝晩は、半そででは寒い時期。

「このまえ、四つばのクローバーをアルがくれたから、お返しにあげようと思って、探してた…」
 拗ねた子どものように、ぽつり、と呟く。
 アルフォンスは、溜息をついて、
「ありがとう。でも、僕は、兄さんが冷えてるほうが悲しいよ」
 そう、肩を抱きしめ、そっとブランケットをかけてくれた。
「そんな、露出の多い服でなんて、許せないし!庭をたまたま覗いた男に襲われたらどうすんの!」
「そっちかよ!」
「早く部屋に入ろう」
 そう促したが、
「ダメだ!まだ、四つ葉が探せない」
「いいよ。兄さんがいれば幸運だし――って」
「ん?」
 アルフォンスが、兄の手を支えて、立ちあがらせた時、地面を見て、目を見開いた。
「すごい。兄さんの居たあたり一面、四つ葉のクローバーじゃない!白爪草もあるけど」
「へっ?」
「一体、どこに目をつけてるわけ?」
 そうしゃがんで取ったアルフォンスの手には、四つ葉のクローバーがいくつも握られていた。
「えええっ!?オレ、ぜんぜん見つからなかったのに!」
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