中央編E

□中央編123 潜入捜査
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「マジでぇ〜?そりゃ、あっちがわりぃな」
「だろ〜?で、あんたはどうしたんだ?腕、吊ってるけど、骨折かい?」
「ああ。普通なら、これくらいの怪我、すぐ治るんだけどさぁ、医療錬金術師がいなくてさぁ」
「医療錬金術師がそうそう治してくれるもんかい。居たとしても、バカ高い治療費請求するあくどいヤツもいるらしいぜ」
「えーそうなのか?オレの知ってる医療錬金術師は、ちゃんと国家資格を持ってて、良心的なヤツだけど」
「あ、オレも聞いたことあるぞ。そいつも国家錬金術師らしくてさぁ、銀時計かざして、治療してくれるんだとよ。治るには治るんだろうけど、その治療費が、バカ高い。オレらの稼ぎじゃあ、一生働いても無理だぜ。そのうち、過労で死んじまうぜ」
「まったくだな」
 げらげらと笑いだした中年男性二人に、金髪の小柄な男も「へぇ」とその話を興味深々で聞きつつ、質問しようかと思った時――

「に・い・さ・ん」

 ゴオっと一気に辺りがブラックオーラに包まれて、エドワードは、「ひい」っと反射的に後ろへ下がった。
「ちょっと!右腕骨折ってどういうこと!?しかも、セントラル病院でも軍病院でもなく、小さな総合病院なんて、探すのに、どれだけかかったか…!」
「どれだけかかったかって、おまえ、出張で今朝帰ってくるって話だったから、案外早くわかったんじゃねぇかよ」
 現在、朝の十時を回った所だ。
「しかも、エイジ診療所へ行ってないって!」
「エイジとエネルとソルは、まだエネルの田舎にいるんだとよ。応急処置をしてくれたのは、たまたまユンと一緒に居た、看護師希望のアリッサで、一番近いこの病院へ運んでくれたってワケ」
「それっていつの話」
「アルが出張に行った日だから――三日前か」
「なんで、早く連絡してくれなかったわけ!?マリアンに口止めしたね!?」
「おう。滅多に使わない、権限を使ってみた☆」
 にこぱっとカワイイと形容されてもいい顔で、エドワードは頬笑んだ。
 だが、二十数年共に過ごした弟には、通用しなかったらしく――
 ゴオっとさらに、黒いオーラが濃くなってきた。
 そして、エドワードの吊っている腕の脇下から手をいれ、さらにもう片方で腰を支え、ひょいっと抱きあげる。
「うわっ!」
「あのねぇ、兄さん。貴方はカリにも将軍なんだからね!!こんなところで、一般の人々と談笑していい地位じゃないの!いい!?」
「怪我人に、地位もくそもねぇし!なっ!?おじさんたち!?」
エドワードとアルフォンスの会話を聞いていた二人の中年男性は、――どちらも腕か足に包帯を巻いている――目が点になっていた。
「は…?しょ、しょうぐん?」
「将軍って、軍の…」
 そこで、アルフォンスは、にこり、と笑って、

「彼は、こう見えても、中央軍司令官、エドワード・エルリック少将です。このことは、他言なさらぬよう」
「だから、ココで軍とか地位とか関係ねぇし!なっ!?」
 見た目と地位のギャップに、二人の中年男性は、持っていた松葉づえをカランと落した。
「では、失礼します」
 そういうアルフォンスに、抱きあげられたまま、
「じゃあな、おじさんたち。また、どこかで会おうぜ!お大事に〜」
 そういって、手をひらひらとさせていた。

「「……」」
 残された、二人の中年男性は、顔を見合わせて。
「…今、なんて?」
「あんなちっこい子どもが、少将?何かの間違いだろ…?」
「いや、だが、確かに聞いたことがある。背は低いが、頭のキレる男が軍にいると」
「にしても、あんなかわいくていいのか!?軍といえば、屈強な男たちの場所だろ」
 
「それは偏見です☆」

 中年男性の間を横切って、スタスタと歩いて行く、長剣を背負った、ピンク色の軍服の女性に、二人はふたたび顔を見合わせて、目を点にさせていた。
 
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