中央編E
□中央編 まちがってる
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まちがってる。
「オレの近くにいる人間は、誰も“間違ってる”とか罵ったりしない」
「え?」
ソファで二人だけで、ワインを開けた日。
二杯目に口をつけた、兄がそう呟いた。
二人、寄りそうように座って、傾けるグラスに酔いながら、心地よさにも酔いしれていた。
「誰よりも、オレとおまえが一番、わかっていて、感じていることなのに」
帰ってから、兄の様子がおかしいとは、思っていたが、何かあったのだろうか。
「うん――何か、言われたの?」
「いや、直接ではないけど。アルに恋人がいないのはおかしい。兄がいつもくっついているからだ。二人は、怪しい関係だ、とか、気持ち悪い、兄弟でなんて、おかしい。男同士もおかしい。とか、いろいろ」
「そうだね。確かに、オカシイかもしれない。でも、僕たちに近い人たちが、そう言わないのは、兄さんに僕が必要だと認めているからじゃないかな。一応、僕たちの関係は、近くの人以外は、隠してるでしょう?」
「あー…うん、まぁ」
「え、隠してないの!?」
「意識してない…」
「あはは。まあ、それでもいいけどさ。僕には、兄さんが必要だということも、周りの人は分かってくれてる。それが、諸刃の剣だということも。いっぱい悩んで、考えて、出た結果は、結局愛し合うことで落ちついたはずだよ」
「…他人からしたら、兄弟で、なんてオカシイことでも、オレたちにとって自然だったら、それでいいよな?」
それは、確認のような気がした。
まるで、もっと愛して、と言っている子どものような。
「いいに決ってるでしょ。僕は、兄さん以外の人にキスとか抱きしめるとか、考えただけでもキモチワルイよ…!」
きゅっと背中から抱きよせる。
少し、悲しげな表情が、後ろからでもわかる。そうして、たまに悩んでしまうことも、僕にとっては、切ない。
だけど、結論は毎回おなじ。