中央編E

□中央編 Re;ウチのオトウトがモテすぎな件
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Re;ウチのオトウトがモテすぎな件


「ただいま、帰りました」
「おーおかえり、ハーク。どうだった?大総統府――」
「滞りなく、本日の会議は終了です」
「んーなことは聞いてない。大総統府一モテるウチの弟の様子だよ!」
 そっちですか…と、アンダーソン兄はもちろんのこと、大部屋にいた、アンダーソン弟、ユンも思ったに違いない。
「相変わらず、各司令部から集まって来た女子たちをころころとまぁ、よく転がしておりましたけど」
「どうしたら、ウチの弟はモテなくなるんだろーな」
「そういうわりには、なんか顔嬉しそうじゃないですか」
「そーかぁ?」
 そういうエドワードは、なぜか自然に笑みがこぼれている。
「さて、書類でもするか」
 その一言で、アンダーソン兄は、持っていた書類をバサバサ、と落した。
「私が一日中、会議に行ってる間、なにをしていたというんです、貴方は!」
 びしっと指を指されてしまったエドワードだ。
「人を指さしちゃいけないんだぜ」
 にしし〜と笑って、エドワードはさっさと執務室に入っていった。
「っ!!」
 憤りをぶつけたい本人が隠れてしまったので、アンダーソン兄は、しかたなく自分の弟を見る。
「……」
 だが、弟すらも、見て見ぬフリをして、自分の仕事ダケをこなしているのだった。

「うちの司令官、一番使えん…!」
「それには、同意見だ」
「私もです」
 黙っていたユンも思わずそう言っていた。


「え?嬉しそうでした、か?」
 翌日も、アンダーソン兄は、会議の為大総統府へと行っていた。各司令部の代表が来る会議で、司令官が来るのが普通だろうが、中央司令部だけは、諸事情により、副官なのだ。
 そこへ、大総統秘書官のアルフォンスと二人で歩いている時、昨日の話をすると、アルフォンスは、くすり、と笑った。
「たとえば、恋人がモテたら、不安だとか、嫌な気持ちが渦巻くものじゃないのでしょうかね」
 アルフォンスは、綺麗に口角をつりあげた。

「それは――ええ、確かに、ヤキモチは妬いてしまうかもしれませんね。でも、僕は、常に“兄の隣にいて、引けを取らない人間”でありたい、と思っているので、兄が嬉しそうなのであれば、それでいいんです」
「え?意味がさっぱりわかりません」
「ですから、非モテな男より、多少モテた男のほうが、嬉しいじゃないですか。兄からして、ウチの弟はモテるんだぞ。っていう自慢ができます。そんなモテる男が、自分に夢中で、自分が支配できる立場にある――ゾクゾクするでしょ?」
「うわぁ…つまり、貴方も、少将がモテるのは、嫌だと思いつつも、そう思ってるということですね」
「う〜ん。僕の場合は少し違います。兄がモテるのは仕方ありません。魅力しかない人ですから!僕が魅かれるように、周りの人間も魅かれてしまう。だけど、ただひとり、僕だけにはそれに応えてくれる。『弟だから』かもしれません。だけど、それが、特権だということです」
「どう違うのか分かりませんけど」
「彼を『エドワード』や『少将』と呼ぶのは全員ができます。だけど『兄さん』は僕だけ。オンリー・ワンなのです」
「それはやっぱり『おとうと』だからでしょう?そういったことに理解はできませんけど…つまりは、自分たちの世界は、なんぴとたりとも、冒せない絶対的な領域――といいたいんですね」
「その通りです☆」
「…病んでますねェ」
「いまさらですか。生まれた時から、彼がいるんですよ。他なんて、要りませんよ。兄は、僕だけのものではないかもしれないですが、僕は兄だけのものなんです。僕だけのものと願うこともあるので、こういう関係になってしまったんですよ」
 あはは、と笑ったアルフォンスに、やはり理解はできない、と思ったアンダーソン兄だ。

「同じベッドにいれば、嫌でも、兄は僕を意識するでしょ?」
 ――その時だけは、絶対に僕のものなんですよ。
 し、と唇に人差し指を立てて、アルフォンスは廊下を突き進んでいった。

「この兄弟、理解に苦しむ…」
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