中央編⑥
□中央編124 ケンジャ ノ イシ
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「頼んでおいた、過去の国家錬金術師資格試験志願者リスト、用意できた？」
「貴様…借金の保証人の礼も聞いてないのに、早くもそれか！昨日今日で用意できるわけなかろう！」
「なんだよ。お礼を言えばいいのか？パパ、ありがと～☆」
ぞわわわぁ～とロイの腕に鳥肌が立ったらしく、ロイは真っ青だった。
「貴様にパパとは言われたくないぞ、エドワード！」
「オレも言いたくねェし。ホントの『パパ』だったら、もっと待遇いいだろうしな。うん、『パパ』作ろうかな…」
「やめろ、ばかもの！アルフォンスがキレるわ！」
「うん、それはヤだな。じゃ、早急にリストアップしといてねん。あと、ゼノタイムの旧マグワール邸の跡地に調査いれて」
「このまえの事件と関係あるようだな」
「マグワール邸の地下に赤い水が溢れてたんだけど、それをトリンガム兄弟が消したことは報告入れただろ？忘れたとは言わせないぜ」
「ああ、知っておる」
「わずかに残ったらしい赤い水を精製したのか、赤い付着物が、ニセモンエイジの持っていた銀時計に入っていた」
「…わかった。調査しよう」
「頼むぜ☆じゃあな。ソルに会ってくる」
「…エイジ診療所に預けたあの子どもは元気なんだな」
「ったりめーだろ。あの子は、オレたちみたいな間違いは、犯さない」
そう、寂しげに笑ったエドワードに、ロイは胸の奥がちくり、と痛んだ。
「それでも、おまえたちは幸せだろう」
「罪の上にある幸せだ。アルになにかあれば、それは消えるだろうな」
「自分も大切にしろ。たまには“パパ”の言うことも聞け」
「ケっ！自分で言うなっていっておきながら、言うんじゃねェよ、きもちわりぃ！」
そういうと、微かに頬を赤らめて、エドワードは大総統執務室を出て行った。
☆
「アリッサとユンが付き合ってる？」
「ええ。挨拶したいようはお話でしたよ――ショック、ですか？」
ちら、とエネルを見ると、エネルはソルを、たかいたか～いと上で抱っこしていた。
「マジか…。ショックはでかい。でも、その辺のアホそーな男よりは、ユンのほうが、百倍マシ！」
「でも、うまくいって、結婚になってもいいってことですか？」
「ううううう…。つらい、痛い。でも、しょうがねェよなぁ…。年頃になったら、それは仕方ない。でも、まだ結婚はダメだ！つーか、あの東方図書館のユンのねーちゃんと親戚になるなんてな…」
「あはは！変装名人ですね」
「うん、まぁ…。アリッサが幸せになれればいいんじゃねェかな。かあちゃんにも、血のつながった孫、見せてやれるし」
そういったエネルに、エイジは視線を落した。
「すみません」
「は？」
「…本当は、自分の子ども、欲しかったんじゃないですか？」
「え、いるじゃん。おまえには、ソルが見えないのか？」
ずいっと押しつけるように、ソルをエイジの目の前に向けた。
「あうー」
と、喃語を発したソルに、エイジは小さく笑う。
「貴方の、血のつながった子ども、です」
「繋がってるだろ。オレとソルだって。ソルとおまえも繋がってるし、オレとおまえも繋がってるだろ」
そう差し出した手は、無理にエイジの手を引きだし、指を絡めて握りあう。
片手には、ソルを抱っこしたまま。
「名字だって、繋がってないし、血だってまったく繋がってねェけど、縁があって、つながった三人だ。それだけで、十分だろ。ウチの母ちゃんだって、おまえのこと気に入ってるし、ソルだって、可愛がってくれてた。おまえは、それでも不十分か？」
「勿体無いくらいです。僕には」
「だったら、いいだろ。ウジウジすんな」
ねこぱーんち☆と言いながら、ソルの小さな手をエネルが動かして、エイジの頬に当てた。
「問題は、おまえのことを、何て呼ばせるか、だな。オレは父ちゃんでいいけど、おまえは？」
「リーンでいいです。貴方がそう呼ぶのなら、きっとそう覚えますよ」
「ま、なんでもいっか」
「ええ」
二人、笑い合った瞬間、
「ちーっす。ソル～あそびましょ～」
そんな声に、エイジとエネルは笑った。