中央編E
□中央編 まだ空は…
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まだ空は…
まだ空は、土砂降りなのに。
上がる気配もないのに、
貴方は笑っている。
「雨、お好きなんですか」
呆れた口調で、アンダーソン弟が呟く。
「ん〜キライじゃねェ、かもな」
そういうと、くるり、と赤い傘を回して、びちゃびちゃと地面の水を跳ねさせながら歩いて行くエドワードに、溜息をついた。
現在市井見回り中だ。司令官自ら行く必要はないとおもうのだが、東方から続く取り組み――ペットの散歩のようだ――らしい。
「私は嫌いですね。雨は。鬱陶しいので」
「ん〜ヤなこと思いだすけど…上がるぜ。雨は。んでもって、綺麗な虹を連れてきたり、一層空の色を際立たせる」
「上がる気配もないですけど」
自分のもつ、軍支給の傘は、真っ黒だ。そこから覗き込む空も、やはり暗くて、雨を降らす。
「でもさ、あがらねェ、雨なんてないんだよ。何日も続いたって、やっぱり雲だって、先へ進む」
「……」
「うおっ、コレ、カワイイ!」
なぜか店先のショウウインドウを覗き込む。というより、べったりとくっついていて、店の中から見たら、ずいぶん怪しげだろう。
「妹のお散歩用に、このレインコート買ってやろうかなぁ」
うきうきしている司令官に、アンダーソン弟は、
「…失礼ながら、少将。貴方の妹は、猫ですけど」
みるからに、子ども用のレインコートだ。水色にみずたま模様の。
「ああっ、そうだった!」
…少将にとっては、あの猫が人間にでも見えるのだろうか。だったら、かなりキケンだ。医師の治療が必要かもしれない。ああ、弟は医者だったか。
「サイフ持ってたかなぁ」
ごそごそとポケットを探り、ガマ口小銭入れを取り出す。
「おおっ、足りるかも!」
そういうと、少将はその店の扉を開いたのだった。
ってか、中央司令部司令官、少将階級であり、国家錬金術師が、ガマ口小銭入れ?札が皆無?ゆ…夢がない。