中央編E

□中央編 たなばた
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「織姫様と彦星様は、一年に一回だけしか会えないってユンが言ってた」
「ああうん、そうだってね」
「でもさぁ、会えない分、364日、完全に相手の心を独占できじゃん」
と、呟いた。
アルフォンスは、
「でも僕は、触れられる距離がダイジだと思うよ」
するり、とエドワードの頬を撫で、下りようとしたそのアルフォンスの手を握る。
「うん…そうだな。アルと離れるなんて無理だな。しかも、会えるのが、一年に一回だなんて!」
「でしょ?」
ふ、っと笑ったアルフォンスの唇に、にこっと笑ったエドワードの指先が触れた。
「近くにいて、365日、独占したほうが、願いや祈りさえ必要なくなるし」
「じゃあ、今年の短冊には、何も書かないの?」
「おまえの心に書いとくよ。だから、消すなよ」
 トン、とアルフォンスの胸にひとさし指を置く。
「一生離れられないように、おまえの心、オレが独占する」
「じゃあ、兄さんも書きとめておいてね。――兄さんの心も、僕が独占する。この先、何十年と、ね」
「はは。そんなの、お前が生まれた瞬間から、独占されてるさ」

 ――オレの目の前に生まれた奇跡は、きっと、過去の小さなオレの願いだったに違いない。
 輪廻転生なんて、あまり信じちゃいないが…きっと魂から、ずっとおまえを求めてるよ。
星が瞬く、その刹那すら、おまえを独占したいと願ってる――


おわり
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