中央編E

□中央編129 パートナー
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パートナー

男が男を惑わす。そんなナマヌルイものじゃない。
心をえぐられるかのように、惹きつけられる。
拾われた恩があるからなんていうものは、タテマエ。
ただ…惚れただけなのかもしれない。

「おはようございます」
主が眠っている部屋へ起こしに行くと、相変わらず機嫌の悪い顔で、自分をにらむ。
いい加減、毎日屋敷で眠って欲しいのだが、まだアパートで眠る日も少なくない。
ベッドと椅子、マグカップ。それだけしかないアパートの一室で、ひとり、何を考えてここに佇むのか。
いや、もうひとつあった。
……写真だ。
アレンという、彼を守って死んだという恋人。その復讐のごたごたで軍を辞めたとか。

大切にしていることは、分かる。表情で、読み取れるようなひとではないが、それでも表情でなんとなくわかるようになったのは、彼の近くにいるからだろう。

「……時間はまだのはずですが」
「ビジネスパートナーと会うのも仕事です」
「早朝から会うような、パートナーはいませんが」
早朝というが、彼の“早朝”なだけであって、午前10時だ。
「会えば分かります」
「…」
明らかにめんどくさいというため息をついて、彼はベッドから起き上がった。
素肌にシャツを羽織る。タバコを燻らせた時、少しは急いでくださいと思ったが、すぐに消して、そのまま洗面に向かったようだ。
「…」


黒塗りの車に、黒い髪の主を乗せて、しばし走らせる。停まった場所に、主は僅かに眉を動かした。
「……ビジネスパートナー…といいませんでしたか」
「いいました」
ふん、と鼻で息を吐いた。

「よ!マーカー!早かったじゃん」
車が停まったのを知って、金色の彼が、家から出てくると、主の目が「どういうことだ?」と自分を見る。
「今、とある宗教団体の借金が返せない代わりに、土地か孤児を受け取るはずだったんですが、それがエルリック氏の知ることとなり、呼び出されたのです。」
そんななか、エドワードはさっさとマーカーの乗る後部座席に乗り込み、「おら、ルイ!出発!」といっている。
「…朝からマーカーの顔を見るのは久しぶりだな。ルイに起こされて、いらってしねえの?機嫌悪いだろ?朝は」
「非常に不機嫌です。なんの為に屋敷で寝ないのかわかってもらいたいくらいです。」
「ちょ〜低血圧のおまえに、栄養ドリンクもってきてやったぞ!」
と、渡された小さな瓶をしばし見つめ、
「誰の調合ですか」
「アルじゃねーよ。エイジだぜ」
「それならいただきます」
と、口に入れて、
「それ、抹茶風味だからオレ嫌いなんだよね〜なんでイチゴとかにしないのかね〜」
滅多にワケノワカラナイモノに口にいれない主。屋敷でも、私以外が用意したものはくちにしないのだが、彼のものは疑いもなく口に運ぶ。
…信頼、しているのだろう。
 ちり、と胸の奥が痛んだ気がしたが、それを表にだせるわけもない。

「それで、どこへ連れていく気ですか」
「そんなん、おまえらが狙ってる孤児院じゃん」
「狙ってるって、失礼な言い方ですね。あっちが借りた金を返さないだけですよ」
「だからって、人身売買はダメだろうが!」
「人身売買か臓器売買かわかりませんけどねェ、それに関して、オレには話が上がってきてません」
「おまえ、部下任せなんて、ダメだぜ」
 その時、主がちらり、と私を睨んだ気がした。
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