中央編E

□中央編 あれ、なんだか少将…
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あれ?なんだか、少将…ちっさくね?


「おはようございます、少将。徹夜、お疲れ様です」
 朝イチで、ユンがエドワードの執務室の扉を開いた。その部屋の主である司令官は、ときどき、椅子ではなく、デスクに腰をかけて本を見るという、行儀の悪いことをしているが、今もそうだった。
「はよー、ユン」
 ん?
 声がちょっと違うな、と思った。貫徹で、声が出てないのか、と思ったが、痰が絡んだような、そういう声ではなく、声が高いというか、幼い、というか。でも、まあ、こんな感じだったか?と思い直す。
「今日は、練兵場での演習を見て頂くことになっておりますが、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない」
 そう、ぴょん、とデスクから飛び降りたエドワードが、ユンの前に立った。
「…あれ」
 なんだか、違和感がある。
 確かに、彼は自分よりも目線は下だ。いつもは、自分の目の高さに、額よりやや上あたりになる。だが、今は、自分の顎辺りに頭のてっぺんがある。
「…少将の軍靴は、踵が高くしてあったんですか」
 錬金術師なら可能だ。
「うんにゃ。縮んだ」
「は?」
「ちょっと、体が幼くなってるだけ。頭脳明晰なトコはかわんねーから、気にすんな」
 にゃは、と笑ったエドワードだったが、ユンは真っ青になった。

「どういうことです!?」

 …そして、すぐさま大総統府から、秘書官が召喚された。


「たまぁ〜に失敗すんだよな。錬成に」
「ってか、なんの錬成をしたわけ!?仕事じゃなかったの!?」
「仕事してたらさ、本棚にこういう本を見つけて、試してみたってわけ」
 エドワードが見せた本は、『二十歳すぎても、身長は伸びる』という題名のもの。
「ちょっと前に、細胞を若返らせるという、構築式を思いついて、つい、陣を描いちゃって、気づいてたら…若返っちゃったみたいでさぁ。すぐ元通りになると思うんだ。効力の時間は限られてる」
 そんな声も、可愛くて、ちょっと和みそう…。と、思ったが、かぶりを振って、元の思考に戻したアルフォンスだ。

「まぁ、ちょっと、ちっさいかも。と思われるくらいだから、軍靴の踵を錬成しておけば大丈夫じゃないかと思うんだけど…」
 アルフォンスも、心配しつつも、司令官という立場上、やっぱり彼も仕事をせねばならない。

「とりあえず、アンダーソン兄弟の前に行ってみたらどうでしょう」
 ユンの提案に、エドワードは、大部屋へ行くことにした。

 執務室から、大部屋への扉を開いたら、
「ああ、ちょうどいいところに。この書類、ヒトフタマルマルまでに欲しいそうで、確認をお願いします。そして、研究所のほうへ回す書類は、翌日ですが、今日研究室へ行く予定があるそうなので、同時刻までに確認をしてください」
「おう、わかったー」
 アンダーソン弟からそう渡された書類を受け取ったエドワードは、再びアンダーソン弟を見る。
「どうしました?」
「おまえ、何か気づいたことない?」
「貫徹ご苦労様です。風邪でもひかれましたか?」
「って、ちがうし!」
「は?」
 何もわかっていないのか、アンダーソン弟は首をかしげる。すぐに、アンダーソン兄が、「おはようございます。本日の演習、見て頂けるんでしたよね。ちょっと気になる隊があるので、そこをまとめておきました。目を通しておいてください」
 と、紙の束をくれた。
「…ハークも何も気づかねェ?」
「風邪でもひかれましたか?声がいつもと違いますが。昨日は、貫徹だったようですね」
 そんな二人の言葉に、アルフォンスとユンがクスクスと笑っていて、エドワードは、むすっと口を尖らせた。
「本当のオレはこんなに、ちいさかねェぞ!!!」
「「は?」」
 ほぼ同じ顔で首をかしげた二人に、エドワードは、
「オレ、今、細胞が若返ってるの!頭は相変わらずな頭脳明晰だけど!!」
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