中央編E

□中央編 行きたかった夏まつり
1ページ/2ページ

行きたかった
なつまつり


「あ〜あ。今年は、夏まつり行けそうにもないな〜」
 毎年、軍主催の夏祭りがあるのだが、今年は、司令部の窓から、遠くの花火を眺めるだけになりそうだ。
「そうですね」
 ユンが、資料を集めて、トントンとデスクでそろえた。
「ここぞとばかりに、仕事多いですしね。エルリック大佐は、行かれるそうですね」
「おう。大総統も行くから、その護衛兼合コンだな」
「ご、ゴウコン?ですか?」
「なんか、大総統府のキレイどころを集めて、一緒に行くらしい」
 そんな話を聞いていた、アンダーソン兄が、
「なんて羨ましいことを…!大総統府、暇なんですかね」
「ハーク。欲望がダダモレだぜ」
「最近まともな休暇も、遊びもしていないものですから」
「おまえでも遊ぶんだー」
「それなりに」
「んーじゃあ、行きたかったら行けば?ユンもアリッサと行けば?エフィもな」
 たった今入室してきた、アンダーソン弟が「は?」と首をかしげた。話しが見えないらしい。
「だから、軍主催の夏祭り。研究所がメインでやってんだろ?みんなまとめて行けば」
「なんだか、拗ねてるみたいな言い方ですね」
「だって、オレも行きたいけど、書類はこーんなにあるし。アルがモテるのは、自慢だけど、見たくねーし。遠くで寂しい思いしながら、上がる花火もイイかなーってな」
「「「……」」」
 ユン、アンダーソン兄弟三人は、顔を見合わせた。
「…少将、熱でもあるんじゃないですか?」
 いつもなら、書類なんてほっといて絶対行くだろう。カワイイだろーなんていいながら、浴衣を着て。
 そういったユンの代わりに、「しつれい」と一言いって、アンダーソン弟が、エドワードの額に触れた。
「ありますね」
「「ええええ!?」」
 慌てて、氷嚢と体温計が用意され、体温計が示したメモリは、40度近かった――。



「いわゆる夏風邪でしょうね」
 慌ててエイジ診療所へ運ばれたエドワードは、ベッドの上でぼんやりと天井を見つめていた。

「今日、夏まつり、行くんだろ?エイジ」
「行く予定でしたけど、貴方をほっといて行けるわけ、ないじゃないですか」
 そう笑った親友に、エドワードは鼻の奥が痛んだ。
「ばーか。行けばいいじゃん。エネルとソルと三人で、始めての夏まつりなんだし」
「来年もありますよ。それに、エルリック大佐、仕事で帰れないんでしょう?風邪引いた時って、一人は寂しいじゃないですか」
「…家に帰れば、B号いるし。あいつ、オレの枕元で丸くなってくれるぜ?」
「そうでしょうけど、点滴必要ですから」
「家でする。家のベッドのほうが、ゆっくり休める」
 そういわれては、本心じゃないとしても、帰らせるほうがいいのかも、と思ってしまう。

「では、ジョリーに送ってもらいましょうか。スタンドは移動できるので、そのままですよ。終わったら、抜いて、大丈夫です」
「ん」
 そう返事をして、起きあがった。エネルが用意した車いすに乗り、エネルに押されながら、近くの自宅まで戻った。
「だいじょうぶか?」
「おう」
 ふらふらしながら、ベッドに入り、エネルが水を用意したりすると、B号がひょいっとエドワードの横になるベッドで丸くなった。
「ゆっくり寝てろよ。薬もちゃんと飲めよ」
「おー」
 その返事すら、元気がなく、本当に大丈夫か、と疑ったエネルだ。

 おそらく、アルフォンスには連絡がしてあるだろうから、すぐに帰宅するだろう。そう、思って、エネルは、エルリック邸を後にした。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ