中央編E

□中央編132 ゲリラ豪雨
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ゲリラ豪雨。


「だああああ!暑いあついあついあ〜つ〜いいいいいいい!!」
 ついにキレたか。
 と、ユンは思った。持っていた書類を、ばっさ〜っと撒き散らして、「あ〜あ。さらに暑くなるのに」と思いつつ、ユンはため息をついた。
「昔、東方では、かき氷とかさぁ、アイスキャンディーとかさぁ、おやつにでてきたんだけどなぁ」
「へぇ、そうですか」
 それすら、スルーされて、エドワードは、むうううと頬を最大に膨らましたところへ…
 コンコン、とエドワードの執務室をノックする音が聞こえた。
「はい」
 ユンが扉を開くと、現れたのは――
「げっ」
 思わず、エドワードがそう言いたくなるほどの相手、ショウ=テイラー大将だった。彼が入室し、書類で散らかった部屋をちらり、と見る。そして、次に、エドワードを見た。
「何か御用でも?言っていただけたら、こちらから参りましたのに」
 にこり、と笑ったエドワードに、大将は、フン、と鼻を鳴らして、
「貴様にいい話を持って来てやったぞ」
「…なんでしょうか」
「その歳で、フラフラしているもんだから、いつまでも子どもっぽいことをしておるのだ。南方司令部に赴任しておる、中将の娘との縁談を設けてやった」
「…えっとー…アンダーソン大佐ですか?それとも中佐?」
 しれっとそれを流そうとしたので、大将は、
「おまえだ。エドワード・エルリックを指名しておる」
「はっ。お断りします」
「この私の縁談を断ると?」
「オレが結婚したら、泣くオンナもオトコもたくさんいますし、なにより、大総統がさびしがるでしょ?」
 ふ、と目を細めて金の瞳を光らせたエドワードに、大将は、「フン!」と顔をゆがめて出て行ってしまった。

「いいんですか。あの言い方で」
「かまわん。さて、オレは暑いので、むさ苦しい司令部から飛び立つ」
「はっ!?」
 そういうなり、エドワードも執務室から飛び出して行った。
「少将!」
 ヤバイ!本気で走られたら、私では敵わない。そう思った矢先、廊下ですれ違った瞬間、エドワードだと気づいたアンダーソン弟が、持っていた書類をユンに渡し、くるりと踵を返して、その後を追いかけて行った。
 今、出て行かれると困ると、瞬時にアンダーソン弟も判断したらしい。
 その背中は、あっという間に見えなくなってしまった。


「あ〜あ。このオレの脚力に敵うヤツがいたとはな。ってか、おまえ足、早かったもんな」
 ぶつくさいいながら、街を歩いている司令官に、追いついたアンダーソン弟は、
「いえ。貴方が、キンダーガーデンの子どもたちの列に出会わなければ、追いつきませんでした」
 街に出ると、子どもたちが引率の先生と共に、並んで歩いていた列に出くわしてしまい、失速を余儀なくされた。そのスキに、アンダーソン弟が追いついたらしい。
「それで、逃亡の原因はなんですか」
「暑いから」
「走ったら、余計暑いでしょうが!」
 と、思わず叫んでしまった。そんな、アンダーソン弟の言葉なぞ聞いていないエドワードは、ニカっと笑って、
「かき氷的なモン、喰おうぜ」
 そう、カフェに誘ったのだった。

「なんですか、かき氷って」
「おまえ、しらねーの?」
 カフェに入るなりそう言われて、エドワードは、
「いいから食べなさい。おごってあげるから」
と、勝手に注文された。
「おまえは、マーカーオススメのヤツな。オレはいちごみるくー」
「なんですか、それ」
 店員に注文して、しばしまつと、砕いた氷らしきものが、ピンク色に染まっている。その上にさらに白いものがかけられているものと、みどりに染まったそれがでてきた。しかも、自分のものだと言われたみどり色の氷には、黒い豆のようなものが乗っている。
「おまえのは、宇治金時。オレのはいちごみるく」
「…みどりに黒いマメって…」
「だあれが、マメみたいにちっさいだー!!」
「誰もそんなこと言ってませんって」
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