中央編E

□中央編 魂がかえる場所
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魂がかえる場所


「おぼん?」
 ユンから聞いた、不思議な言葉に、エドワードは首をかしげた。
「ええ。東の島国では、地域によってさまざまですけど、夏に、祖先の霊を祀る行事があるんです。亡くなった方が、帰ってきて、家族と共に過ごすのです」
「へー…」
「祖母と共に過ごすことが多かったので、よくそういうことを聞かされました」
 そんなユンとエドワードの会話に、アンダーソン弟が、
「…だからですかね。最近、やたらと肩が重いんですけど」
 ガタン!と大きな音を立てて、エドワードが後ずさりした。
「やめろ!マジで!!」
 そんな蒼ざめた司令官に、ユンとアンダーソン弟はくすり、と笑う。
「嘘ですよ」
「なんだよっ!!覚えてろよ!もし、オレがのたれ死んだら、エフィーんトコに帰ってきてやるからな!!」
「ええ?エルリック大佐の元に帰らなくていいんですか?」
「ばっか。オレが死んでるのに、アルが生きてるわけねェだろ」
 に、と笑ったそのエドワードの表情に、なんだか怪談をきいているような悪寒を感じた。自信満々なその顔が怖い。
「アルと二人で、おまえんトコに来てやるからな」

「や…やめてください、本気で!!」
 蒼ざめたアンダーソン弟に、ユンはくすくすと笑った。
「何を遊んでいるんです」 
 と、呆れた声でアンダーソン兄が入室してきた。
「ふふ。猫の呪いだぜ。おまえら、呪ってやるからな。むふふふふ…」
「え、なんで私まで?」
 話が見えない、アンダーソン兄だ。

 …ユンは密かに思う。
 魂になった少将が帰ってきたら、それはそれで、楽しいかもしれない。そのころ自分も魂だけになっているかもしれないが。
 …自分たちの魂は、一体どこへ帰るというのだろうか。

 ふと、想う女性(ひと)を思い出し、わずかに笑みを引いた。


ええっと、ゆってなかったかもしれませんが、ユンの祖母は東の島国出身です。
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