中央編E

□中央編 やってやろうじゃん
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やってやろうじゃん。


「よろしくお願いします、少将。今回は、胸を借りるつもりで」
 そう、にこり、と頬笑んだアルフォンス。エドワードは、手を差し出して、にこり、と、同じように笑みを浮かべ、その手を握った。
 そんな二人に、周りにいた、アンダーソン兄弟、ユン、そしてすこし離れた場所でエネルは思っていた。
「「「「二人とも、うさんくさい顔…」」」」と。

「そもそも、なんで、大総統府とうんどうか――いえ、合同演習をすることになったんですかね。しかも、体術。というか格闘?」
 アンダーソン弟の言葉に、アンダーソン兄も
「さあ」
 と、首をかしげる。
「聞いてないのか?」
「聞いてない。大体、そういうことは聞いてない」
 なんだ、それは。副官がそれでいいのかとアンダーソン弟は呆れたが、ユンが、
「電話でなんか言い合いしてましたよ」
「「言い合い、ですか」」
「ええ。『おまえに、負けるつもりはねェし』とかなんとか。だったら大総統府対中央司令部で対決しようみたいな、売り言葉に買い言葉的なカンジでしたが」
「「売り言葉に買い言葉で、貴重な時間をこんなカンジで使われているのかっ!?ありえない!」」
 二人の言葉がそろったので、ユンは目を瞬かせた。心では、『さすが双子』と思っているに違いない。

「それで、なんでこんな対戦方法なんですかね」
「さあ…負けたら、草むしりらしいですよ」
「くさむしり!?」
「一体どこの!?」
「司令部と大総統府らしいですけど、プライベートでは、エルリック家の庭も含まれるらしいです」
「やっぱただの喧嘩じゃないですか」
 はぁあああ、と思いっきり長い溜息をついてしまったアンダーソン兄弟だった。


 対戦方法は、一対一で、十人中勝ち数の多いチームが、勝ち。メンバーはそれぞれ選抜されている。そして、アンダーソン兄弟もその中に(勝手に)入れられていた。
 自分の体、背中や腹、胸が地面についたら終了、という勝敗の決め方らしい。腕や足はいいとのこと。銃などの武器は禁止。もちろん、錬金術も禁止だ。

「あれ、エネル伍長も選ばれたんですか?」
「下士官はおひとりですね」
 火のついてない煙草――かと思ったら、禁煙用のニセモノタバコだったーーを咥えて、大総統府チームの方からやってきたエネル。
「おうよ。オレ、観客のつもりで来たのに、アルにお願いされちゃってさぁ」
「それは、お願いと言う名の、命令なのでは?」
「なんせ、大佐殿には、文句いえまい?オレ、伍長だし」
 確かにそうだが、なんという偉そうな伍長だ。大佐を呼び捨てだ。と、思われても仕方がない。普通なら、何らかの罰が与えられるだろう。

「で。オレみたいな、下っ端が、なんとアンダーソン大佐と一戦交えるらしいな」
「…上位五組は、くじ引きって、ホントですか?」
 信じられない、といったアンダーソン兄のセリフに、
「嘘に決ってんじゃん。エドと他の士官が当たったら、嫌がるのは、アルだ。つーか、アル以外にエドの相手ができる人間は、こっちにはいねェ。こちとら、頭脳派が多いんでね。顎で中央司令部のヤツらを動かそうとしてる輩ばっかりだぜ」
 エネルの言葉に、納得してしまった三人だ。

ピ、と笛が鳴ったので、全員が顔をあげると、中央司令部の人間が背中に土をつけていた。
 すでに、第一戦が開かれていたらしい。
「大総統府チームの勝ち!」
 そこで、エドワードが五人のいる場所へやってきて、
「さっそく負けてるし。おい、ハーク、エフィー、ユン!おまえら負けたら、大総統府の草むしりだぞ!そんな屈辱あってたまるか!?」
「ないほうがいいですね。仕事ができなくなるので」
「ふふ。反対に、勝ったら、あの高飛車な大総統府の頭脳派集団をコテンパンにできる」
 エドワードがにやり、と笑った。
「でも、さすが、エリート揃いですね。頭脳派といってますが、体躯はできてますし、現に戦いにも勝っている」
「まだ一勝だろ!オレは、負ける気しねェぜ!」
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