中央編E

□中央編133 君の助け
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 確かに、よくコケるな。
 と思っていた。痛みとかはないが…
「検査の結果、特に異常はないという報告を受けたんだけど…気になる数値が出てるには出てる。筋力は、衰えてるのは事実だし」
 アルフォンスの言葉に、
「書類ばっかだもん。トレーニング参加させてくれないしっ」
「真面目にやろうよ、書類」
「ふわぁい。明日、おまえも来るの?草むしり」
「うん。言いだしっぺだしね」
「大総統は?」
「他の秘書がみてくれる」
「そっか。じゃあ、明日、楽しみにしてるー」
「兄さんは、自分の仕事をするんだよ」
「はぁい」

 そんな翌日、朝から現れた大総統府のエリートメンバーに、
「きゃぁあああ!エルリック大佐、すてきーっ!」
「かっこいいっ!」
 など、中央司令部は朝から黄色い声が響いた。

「草をむしってるだけなのに、あの黄色い声は、すごいな、エルリック大佐」
 アンダーソン弟の声に、アンダーソン兄も、
「滴る汗がカッコイイんだそうだ」
「はは」
「やっぱ、カッコイイもんなぁ〜」
 そんな兄弟の会話に、しれっと入ってきたのは、エドワードだ。三人は、窓から下の中庭を覗き込み、さらに金髪の男を見下ろしている。
 それに気づいた、アルフォンスは、立ちあがって兄に大きく手を振った。瞬間、中庭に面した全フロアの窓という窓すべてが「きゃあああ〜!」という悲鳴で埋め尽くされ、窓ガラスがビリビリと響いたくらいだ。
「今日、ガラスが割れるかもしれんな」
 と、呟いたアンダーソン兄を無視するかのように、窓から覗き込んだエドワードは
「アル〜!がんばれよ〜」
 なんて、言いながら大きく手を振っている。
「うん。って、兄さん、落ちないでね!」
「落ちるか、ばか」
「あはは」
 そんな兄弟の会話中も、きゃあきゃあと悲鳴が飛び交っていた。そのひとつに、「少将、かわいいー!」も含まれていたが、あえて、無視していた。

「なんて、アルはかわいいんだろっ♪」
 鼻歌交じりに、書類を見始めたので、まあ、これはこれでいいか。と三人は思った、自分たちの願いは、書類が終わればそれでいいのだから。


 昼食の時間になり、急にエドワードがガタンと立ちあがり、執務室から出てきたので、三人は、顔をあげた。
「休憩ですか」
「おう。今日はアルとランチする約束してんの」
 そうルンルンと機嫌良さそうに、行ってしまった。


 中庭に出ると、シートを広げた上に、アルフォンスと、草むしりをしていた九名が座ってランチを楽しんでいる最中だった。
「おまたせ〜」
 そういうと、ランチをしていた九名がずざっと立ちあがり、敬礼したので、
「ま、いいから、飯食えよ」
 と、それをひらひらと制止させ、自分もアルフォンスの前に座った。
「お疲れ。今日は、朝から女性士官たちが仕事しなくて困るぜ」
「兄さんはどうなの」
「オレは久しぶりに、ユンに褒められたぜー」
「少尉階級に褒められるって…。普段、一体どういう仕事っぷりなわけ?」
「マジメだって。見回りは」
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