中央編E

□中央編 無茶すんなよ
1ページ/1ページ

無茶すんなよ


 時計は、すでにてっぺんを越えていた。
 アルはまだ帰らない。
 雨はかなり酷くなってきて、心配だ。
「何やってんだ、あいつ…」
 そう呟いた時、がたん、と玄関の方で音がした。
「あ〜やっぱ傘もってかなかったか」
 そうエドワードが声をかけて、タオルを頭にかぶせる。
「兄さん…まだ、起きてたの?」
「おまえが無茶してねェかと思って、心配してたんだ」
「ありがと、兄さん」
 そんな言葉が素直に嬉しい。
「ばか。もっと要領よく早く帰ってこいよ」
「僕も兄さんも、遅く帰ってくることなんて、しょっちゅうでしょ」
「でも、雨とか降ると心配なんだよ」
「…雨がふると寂しい、の間違いでしょ」
「ちっげーよっ」
 頬が赤くなったので、それが嘘だとバレてるかもしれない。

 そう、素直にいうと…
 寂しかっただけ。そして、寂しさが、心配する気持ちを助長する。

「ふふ、そういう兄さんが、だいすき。ちょっと雨がふると、疼くんじゃない?肩や足が」
 それは、古傷のことを言ってる。
「いや…おまえが帰ってきたなら、痛みなんて消えちまう」

 アルフォンスが笑みを浮かべ、そのまま額に口づけを落とす。
「たまには、心配させるのもいいかもね」
「させるな、ばか」

 そんな言葉が、お互いの唇の中に消えた――


おわり☆

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ