中央編E

□中央編 大人な我慢
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(少将両足負傷中です)



「なんで庭で転げて、動けなくなってるわけ」
「う…だって、B号が――」
「B号が」
「木から降りられないような気がしたから、慌てて助けようとしたら、車いすから落ちて――」
「あのねェ!B号は、猫だよ!?この高さなら、ひらりと降りられることは知ってるでしょ!?兄さんは、今、足の療養中!」
 しゅん、と俯いたエドワードに、アルフォンスは、きつく言いすぎたかな、と反省しつつ、エドワードを抱きあげ――そして、肩に担ぐ。
 片手で、ひょいっといとも軽そうに持ち上げられて、エドワードは焦った。
「ちょっ!なんで、荷物みたいに担ぐわけ!?」
「庭で転げて、顔も髪にも土がついてるから、このままシャワーに行くよ」
「だからってなぁ!」
 軽々と持ち上げられたまま、バスルームへと行き、そこにある椅子に座らされ、衣服を脱がされた。
「って、なんでおまえまで脱ぐわけ!?」
「猫を洗うのに、自分も濡れるでしょ!」
「猫は洗わないだろっ!」
「金の美描だよ!」
「オレは猫じゃないやい!」
「美しいってとこは否定しないんだね」
「おまえ美人とは言ってねーじゃん!」
「ふふ。もちろん、美人だよ」
 浴室に用意した椅子に座らせ、シャワーをエドワードの頭からかける。シャンプーを泡だてて、丁寧に頭を洗う。
「…髪、ずいぶん伸びたね」
「だな」
「前髪切ったら?」
「ヤだよ。それじゃあ、女に間違われる」
「今もかわんないよ」
「じゃあ、おまえくらい、短くする」
「ダメ」
「なんで、おまえが言うんだよ」
「だって、兄さんの長い髪にキスするの好きだもん」
「へんたい」
「否定しない」
 体も、泡で撫でられるように洗われる。
「ちょっ、おまえ、手つきヤラシイぞ!」
「やらしいだろうねェ。だって、触ってるつもりで洗ってるもん」
 にこっと笑ったアルフォンスに、エドワードは「ちょっ!」と慌てている。最近、足を悪くしてから、ずっとアルフォンスと一緒に風呂には入ってるが、洗うのは自分でやるといって、きかなかった。
「…それに、ずっと洗うのは自分でやるっていってたのに、今日は大人しかったから」
「……」
 微かに赤くなったエドワードに、アルフォンスは、にっこり、と笑った。
「ちょっとは、無茶して悪かったな〜って反省してるの?」
「してねェし。無茶なんて」
「でも、転がってたじゃない。庭に」
「…ひ、日向ぼっこ」
「起きられなかっただけでしょ」
「だから、B号が」
「そういうことにしておいてあげるけど」
 そう耳朶に囁くと、アルフォンスは背後に周り、兄の下腹部より下に手を伸ばす。
「ちょっ、まて!」
「最近、出してないし」
 するり、とそこを撫でられ、焦って腕を押すが、力は出ない。
「兄さんだけだから」
「…それで済むのか」
「我慢する。大人だから、我慢を覚えたんだ」
「ふうん。別に、我慢しなくてもいいけどって言おうとしたのに」
「ええええっ!」
 そんな子どもっぽいあるふぉんすの声に、エドワードは口角を釣り上げた。
 振り向いて、アルフォンスの首に両腕を回す。
「早く、泡、落とせ」
 耳朶に囁かれた言葉に、慌てて兄の体の泡を流した。
「ちくしょー兄さんめっ!なんでそんなに無駄に小悪魔なの!?」
「心の声がダダ漏れだぞ、アル」
「今からベッドいくからな。覚悟しとけよー!」
「はは。どこが大人になったんだか」
 兄を横抱きして、雫が落ちるのも気にせず、そのままベッドへと運んだのだった。
 バスローブが必要かな、と思いつつ…、まぁ、事後、錬金術で綺麗にしたほうがいいか、と思い直しながら。
おわり☆

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