新婚シリーズ2
□『ハピクリ』
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『ハピクリ』
「やっべ、遅くなった!」
エドワードは、予定のない残業で、家路への道を急いでいた。
カドをまがろうとした瞬間、どん、という衝撃に、一瞬倒れると予測したが、思いがけない力にひきよせられて、倒れることはしなかったが、鞄がどさ、っと落ちた。
「す、すみませ――」
エドワードが改めて、相手を見ると、真っ赤な衣装に、真っ赤な帽子。顔の半分を白い髭に覆われている。
「!?」
驚いたが、今日はクリスマスイヴ。こういう格好でビラを配るひとだって、ケーキを売る人だっているだろう。
「す、すみません」
相手は、にっこり笑っただけで、何も言わずにエドワードの手のひらにぽん、と小さな包みを渡した。
「?」
「Frohe Weihnachten !」
「だっDanke」
「Bitte」
そう笑った、サンタクロースの格好した男――背格好や細めた目は若い男性だろう、とエドワードは思った。
そして、呆気にとられている間に、サンタクロースの格好をした男は去っていってしまった。
「あ…え?今、これ…」
くれたの?思わず受け取ってしまったけど…。返そうにも、もういないし、しかもオレ、お礼もちゃんと言っちまった…。
「あ!そんなことより!」
急がないと、アルフォンスが怒ってるに決まってる。今日は、クリスマスイヴなんだから!
エドワードは鞄を拾って、慌てて走りだした。