toy ring3

□Even
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「セイレーンの歌、ドラマ化?今更、オレとアルで?ありえないな。フツー、違う人間使うだろ?ほら、電車○でも映画とドラマと舞台では違う人間使ってるし。オレを使うなんて、ありえない。以上」
 ホンキでやる気がないようで、エドワードはすぐに興味をなくして、赤い手帳に視線を落とした。
 プロデューサー・マスタングは、やれやれと溜息をついて、ぽん、と草稿を筒にして叩いた。
「アルフォンスは起用していいんだな?」
「ああ。ちょうど、映画の撮影も終わるし、『al』もそんなに慌てたものはないし、連続ドラマも入れてっていいと思ってたし」
「わかった。じゃあ、あとはセイカ役だな」
「そうだな。あ、ウチにピュアなイメージの子がいるぞ?17歳だったかな」
「ちょっとまて。アレから何年たってると思う?」
「へ?」
「あのときは、リオは20歳、セイカは17歳。純愛を描いていた。その後の話だぞ?」
「あと?」
「唄えなかったセイカは声が出てあの映画は終わった。だけど、次はその歌を歌えない。悩んで、助けられて、助けて、違うライバルが出て…今度は少女から、大人の女になる。だけど変わらない純愛を貫いてリオとセイカは生きていくんだ」
「…何熱弁をふるってんだよ」
 相変わらず冷めたエドワードの言葉に、ロイはこほん、と咳払い。
「いいオッサンが純愛なんていうなよ、似合わない」
「オッサン言うなっ!私はいつも純愛を貫いているぞ!リザという妻を、ピュアな心でいつまでも愛しているのだ!」
「キモイって…」
「キモイ言うなーっ!」
「で、セイカの配役は、ウチの女の子使ってよ。じゃ」
「おい、エド!おまえにやってほしいんだ!続編なんだから!」
「あんたの目は節穴か?オレ、男。セイカは女。世間的に『ed』が男だと知られてから、女役なんて、できるわけない。考えてみろ?キモイって言われるぜ」
「それを演技力でカバーできるのはおまえだけだ」
「それで、視聴率がとれるとでも思ってんのか?」
「おもっているぞ。オレは、負ける仕事はしない。まあ、世間には賛否両論あるだろうから、その否定的な意見に、アルフォンスとともに死んでいくなら、止めておこう」
 エドワードは、きっと目を細めてロイを睨みあげた。
「オレの育てた『アルフォンス』がそんなことで、倒れるとでも思ってンのか!?」
 ロイは、にやり、と口角を吊り上げた。
「共倒れ、するかもな」
 ぎりっと拳を握って、エドワードは今まで冷めていた目に焔を灯した。
「アルフォンスは、そんなヤツじゃねぇ!もし、視聴率がよかったら、オレとアルに焼肉おごれよ!!」
「それでいいのか、安いやつめ」
「おまえの給料を心配していってんだよ!社長にも話を通しておく!配役はウチの新人も使えよ!」
 そういうと、エドワードは打ち合わせしていたカフェを飛び出した。


 ふざけんな!アルフォンスは、そんなことで挫ける俳優じゃねぇ!
そんな怒りでいっぱいのエドワードは、はっと気がつく。
「ちょっとまて…」
 オレ、今自分がセイカやるって言ったのか…!?
 うわぁあああ!どうしようっ!?
 頭を抱えたところで、ぽん、と肩を叩かれた。
「兄さん。マスタングさんの話、なんだったの?」
 ふりむくと、キャップで顔をかくしている、アルフォンスがそこにいた。
「う…あるぅ〜…!オレと一緒に恥をかいてくれっ…!」
「へっ?」


 二人が、自分たちのマンションにつくと、やけにジメジメしているエドワードに、珈琲をいれてやって、アルフォンスは隣にすわった。
「で?なんの話だったっけ?」
「『セイレーンの歌』映画の続編ドラマをやるようなんだ。もちろん、映画なくても楽しめるような内容にするだろうけどさ…。数年後の設定らしくって…オレ、怒りにまかせて、オレとアルでやるようなこと言っちまってさぁ…」
「で、ものすごく後悔してるってわけだ」
「うん…」
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