toy ring3

□マーキング☆
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 アルフォンスが出演する番組は、「愛の空騒ぎ」。スタジオ入りするなり、女性の化粧や香水の匂いで、エドワードは慣れているとはいえ、キツイな、と思っている。言い方は悪いが、香水をつければいいってモンじゃない。香水と化粧と整髪料。すべてが合わさると、臭気の何物でもない、と思っているが、もちろん言わない。
 そして、彼女たちの衣装だ。流行を取り違えているもの、半分。水商売系が四分の一。ただ派手なだけの女が残り。
ってか、そこに蛍光色入れないだろ!?
なんだよ、身体にあってない服!!
アクセつけすぎ!かわいそう!!(指輪が)
 そういった女性が、スタジオに二十人弱。一応一般人だ。彼女たちの恋愛に関することを話したりする番組なのだ。

「今日のゲストは、この人!」
 司会業の長いお笑い芸人がそういうと、アルフォンスが登場する。途端、スタジオの女性たちからの悲鳴に似た歓声。
「アルフォンス、カッコイイ!マジかっこいい!」
「かっこええなぁ〜?」
「もう、ステキです!結婚してください!」
「無理や、無理!」
 女性の言葉、ひとつひとつに突っ込み口調で言う司会者に、笑いが渦巻く。
 アルフォンスは、といえばにっこりと人好きする笑顔で、「お願いします」と言って椅子に座った。
 アルフォンスとしては、フツウに椅子に座っただけなのだが、きゃあきゃあと女性の声が響き、司会者の「ホンマに足ながいなあ〜?うらやましいわ」など軽い口調で褒められていた。
 そして、番組は進行されて、女性たちの恋愛話となっていく。
「彼がぁ〜アルフォンスみたいにステキだったら何言われてもいいんですけどぉ〜」
 ダメダ。
 こういうねちっこいしゃべり方は。エドワードはそう思うが、アルフォンスは表情を崩さず笑顔で聞いている。
 ふと司会者に話を振られて、アルフォンスは、
「でも、そう言ってくれるってことは、彼は貴方のことが好きなんですよね。愛されてる証拠ですよ」
 そう言われ、今発言した女性は、真っ赤になって「いや〜もう、本気でアルフォンスに惚れそう」などとハートを飛ばしている。

 エドワードは、ふわふわ、と風に流されてか、香水と整髪料などが混ざった匂いが鼻を掠めて、
「う」
 思わず、口を抑えた。
 視界には、妙に浮いてる蛍光ピンクや、キラキラ光るだけのワンピース。じゃらじゃらとかわいそうに光る、アクセサリーたち…。
 眩しい…。どこまで光らせれば気がすむんだ…。

 吐くまではいかないものの、綺麗な空気が吸いたい。そして、綺麗な…いや、フツウの色でいいから、視界を変えたい。…だが、今は出ていけない。
嗅覚と視覚のダブルパンチに、みるみる血が下がり、頭がフラフラする。だが、今、倒れるわけにはいかず、気力でフツウの顔を保っていた。

 そんな兄を、収録中にも関わらず見つけてしまった、アルフォンス。
 兄さん…?」
 フラフラしている。気分が悪そうだ。
「アルフォンスはどう思いますか」
 そういきなり話をふられた。
 適当に返すと、大丈夫だったようで、話はスムーズに流れた。
「次のテーマは、コレ!『別れた理由』…『妹の話ばかりする彼氏に、私と妹どっちが大事、と聞いて妹と答えられた』あはは、誰やこれ!」
「はい!」
「おまえか!」
 一人の女性が手をあげると、キラキラのワンピースを纏った女性が手をあげた。
「家族を大事にするのはいいんですけど、やっぱりそこは私と言って欲しかったんです」
「そやな。まあ、それはわかるわ。アルフォンスもブラコンやもんな」
「はい――あ、即答しちゃった」
 アルフォンスの言葉に、どっと笑いがおきた。
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