未来軍部11

□ワン オブ サウザンド
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「シークレット任務」
 司令官執務室に現れたガネットに、エドワードは指先でちょいちょい、と近くへ呼んだ。
「え、私に、ですか?」
「ああ。マーカーじゃちょっとな」
 耳打ちをするため、エドワードがデスクに乗り上げて、ガネットの耳にこそこそ、と呟く。
「って、え!?それって泥棒なんじゃ!?」
「おうよ。怪盗みたいだろ?でも、それは違うと確認されたら、戻す予定だから。その辺は大丈夫」
 そう、親指を突き出している、司令官にガネットは、ここ数年信じてついてきた上官だったが、一抹の不安を覚えた。
「でも、私が失敗したら、危険なのは准将です」
「失敗?おまえが?ハッ、そんときゃそん時だろ」
 そう一蹴されて、ガネットは、きり、と視線を上げた。
 司令官は、にっこりと笑って、一本の鍵を掲げている。
「やっぱり、おまえがいいって、駄々捏ねてるみたいだぜ。愛しいベティちゃん」
 それを受け取って、ガネットは、口角を吊り上げた。


 ガネットは、すぐに東方図書館へ移動した。一番奥にある書架のさらに一番上、梯子がなければ絶対に取れない場所だ。
 国家錬金術師じゃなくとも入れる部屋にあるため、ガネットでも用意にそれは取り出せる。
「あら、少尉。ベティに会い来てくれたのね」
 ふいに中年女性の図書司書にそういわれて、ガネットは「お世話になってます」と頭を下げた。
「いつでも、貸し出し可能よ」
 そう片目を閉じた女性に、再び頭をさげて、ガネットは目的の書架の下へ急いだ。
 梯子に登り、一冊の本を取り出す。厚さ7,8センチはありそうなくらい太い書籍だった。
題名は『one of thousand』。
 そこには、小さな鍵穴があり、ガネットは慎重に、司令官から預かった鍵を差し込んだ。カチ、と小さく開錠を知らせる音と共に、その本は開かれた。

 中には、拳銃が埋め込まれてある。
 そっと手にすると、それはすぐに手に馴染み、ちゃんと手入れがされていることがわかる。
「久しぶり」
 思わず、口角を吊り上げてしまった。この感覚は久しぶりだ。

 ガネットは拳銃を懐に仕舞い、本は元の場所に戻しておく。梯子を降りたところで、先ほどの司書が、
「少尉」
 と呼び止めた。
「これが「約束の本」だよ」
 渡された本を受け取り、「ありがとうございます」とガネットは頭を下げて、踵を返した。
 
 歩きつつ、その本を開くと見知った筆跡。
『親愛なるガネットくん。今日のミッションは、22:00成功を祈る ED』
 と書かれてある。
「Yes, Sir」
 そう呟くと、パタン、とその本を閉じた。
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