未来軍部11

□サイミン・サムライ☆
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「久しぶりに、抜き打ち監査、入るそうです」
 そうマーカーに言われて、デスクから崩れ落ちそうだったエドワードは、思わず立ち上がった。
「ぬぁに〜!?いつ!?いつだ!?」
「ですから、抜き打ちなんで、今日、ヒトマルサンマルには到着予定かと」
 慌てたエドワードが、時計を確認すると。
「って、あと三十分じゃん!?」
「ですね」
「どどどどどうしよう!?」
「何か問題ありましたか?」
「って、問題だろ!?この書類の量!」
「それ以外は何の問題もないので、大丈夫ですよ」
「ごまかし書類は!?大丈夫なのか!?」
「貴方の有能な副官が、毎回丁寧に終わらせてますよ」
 そこで、エドワードは、ほっと息を吐いた。
「じゃあ、何しに来るんだ?」
「素行調査も兼ねているんでしょう――司令官の」
「それならまだいいか」
 よくないだろ、と思ったマーカーだがあえて何も言わなかった。だが、身内でもある副官はそうはいかない。
「兄さん、すこしは真面目にやってよ!素行調査くらいさ!」
「なんで?問題ねーよ。だって無能が仕切る世の中になるんだぜ?」
「大総統になったところで、決定権は大総統に確実にあるとは限らない。幹部たちにもすこしは、いいところも見せておかないと」
「え〜。検挙率いいだろ〜?」
「そうじゃなくて、真面目なトコを見せろって言ってんだよ!」
「オレはいつも真面目だぜ。な?マーカー?」
「…返答に困ります」
「んだよ」
 口を尖らせたエドワードに、アルフォンスは、
「これは使いたくなかったけど…」
「ん?」
「今回は、准将が中央に移動した後の、今後の東方司令部にも関わってくるんだよね」
 にこり、と笑ってない笑顔を向けられた。
「へっ?」
「やっぱり、ソニック准将には、なるべく楽させてあげたいから」
 アルフォンスは、再び、にこ、と笑った。
「兄さん、ソファに座ってくれる?」
 よくわからないが、エドワードがソファに座ったところへ、アルフォンスも隣に座った。そして、なにやら耳打ちをしたのだった。


 一瞬、エドワードから力がぬけて、アルフォンスがそっと支える。そして、再び覚醒したとき、その瞳の色が変わったように思ったマーカーは、しばし司令官を見つめた。
「何をしたんです?」
 マーカーが尋ねると、アルフォンスは、
「…以前本を読んで、催眠術を覚えたんです。でも一回しか施したことはなく、今回二回目なんですけど、効いて――ますね」
 アルフォンスがそういったのは、エドワードの表情からだ。
「エルリック中佐!マーカー少佐!何を遊んでいる!仕事はこんなにあるというのに!」
 エドワードがそういったことに、マーカーとアルフォンスは目をぱちくりさせた。
「時間の無駄であろう!」
 エドワードは、自分からデスクにむかい、そして、書類のタワーを、猛スピードで一枚ずつ減らしていくのだった。
「…相変わらず催眠術には、効果覿面…こんな素人の催眠術なのに」
 マーカーは、あきれつつも
「まあ、今日一日くらいこの催眠術が利いてくれることを願っています」
 そういうと、司令官執務室を出て行ったのだった。

「むむ!この書類、誤字脱字だからけだ!やり直させろ!」
 ぺし、と取り出したのは、エネルの書類だった。
「わかりました。ところで、あと数十分で、素行調査の監査部が見えます」
「いつでも来いと言っておけ。ムダな時間は作らないから、勝手に見ていけ、と」
「わかりました」
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