未来軍部11

□稀
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「遅刻した!」
 慌ててガネットは、勤務先である東方司令部に走りこんだ。
 あれ、門ってこんな形をしていたかな…と思いつつ、建物内へ行こうとする。だが、ふと、さらに違和感を覚える。
「…あれ」
 目の前に、立ち尽くしている金髪の二人が見えた。いつものように、軍服を着ているし、一人は長い髪をなびかせていた。
「おはようございます。准将、中佐。どうされましたか」
 後ろからそう声をかけると、二人は同じように振り向き、さらに同じような表情をしていた。
 兄弟だから似ていて当然。だが、二人は
「「司令部が違う…」」
 と、ガネットの理解できない言葉を呟いた。
「え?」
 ガネットも改めて回りをみわたした。
「えっ!?この建物…旧東方司令部…」
 そう、東方司令部の建物は、一度破壊し、建て直されている。似たような造りではあるが、まったく同じとはいえないし、まったく違うところも多々ある。
「そうなんだよ!オレたちが来たら、こうなっててさ!ってか、おまえいつもより遅いじゃん!」
「す、すみません!遅刻してしまって…!」
 九十度頭を下げたガネットだったが、アルフォンスが苦笑して、
「大丈夫だよ。それより、中入ってみようか」
 恐る恐るそう言う副官に、ガネットとエドワードは頷いていた。

 司令官直属部下が集まる大部屋へ足をむけ、思い切ってその扉を開くと、その執務室には、エドワードとアルフォンスの見知った面々がぴたり、と動きを止めて自分たちを見ている。
「え…」
「げっ!」
 目をぱちくりさせているのは、リザ、ブレダ、ハボック、フュリー、ファルマン。
 そして、思わず三人は、後ずさりしてその扉を閉めてしまった。
「なあ、アル!オレ今、リザさんが見えた!」
「しかも肩章が中尉…」
 ガネットもぼそ、と呟く。
「それだけじゃないよ!ブレダ少尉、ハボック少尉、フュリー曹長、ファルマン准尉…。思わず無意識に、前の階級で呼んじゃった…」
 アルフォンスも真っ青だ。
「「ってことは、タイムスリップー!?」」
 兄弟二人の叫び声に、ガネットも真っ青になりつつ、おろおろしている。
「どうしましょう!?でも、何かの間違いかもしれませんしっ!」
「でも、おかしいだろ!オレたちの時代に、この東方司令部の建物は存在しないんだし!造りもちょっと違うし!」
「そうだよ…エイジ少佐だって、エネル大尉だって、マーカー少佐だっていない!」
 三人でわたわたしていると、
「どうしたの。入ったら?」
 リザが、何事もないような顔で、扉を開いて迎えてくれたのだった。



「なんだ、貴様らは」
 黒髪の焔の錬金術師にそういわれて、エドワードとアルフォンスは顔を向き合わせた。そして、思わず、ぷ、と噴出す。
「若い!若いぜ、無能が、若い!」
 兄弟二人でげらげら笑われて、ロイは、ピキ、と額に血管を浮き彫りにした。
「貴様!本当に、鋼のなのか!しかも、その短髪は誰だ!」
 そこで、二人は再び、「「あ」」と顔を向き合わせた。
「弟の、アルフォンスです。この姿では、初めまして、ですね」
 アルフォンスがそうにっこり笑うと、ただ呆然としていた一同は、あんぐり、と口を開いた。
「ず…随分小さくなったな…」
 鎧姿しか知らないロイは、思わず鎧と比べて言ってしまったが、反応したのは、エドワードだった。
「ちっさい、ゆうなぁあああ!!」
「って、マジかよ!?これが、アルフォンスなのか!?」
 咥えていたタバコを、ぽろり、と落としたハボック。
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