未来軍部11

□リリーサーフェロモン
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「よお、このまえは、ご苦労さん」
「こちらこそ、お世話になり、ありがとうございました!私では、やはりお役にたてず、というか…」
「いいや、十分だったぜ。何より、ソニック准将が無事だった」
 にぱ、と笑った司令官に自分より年上という感覚を一瞬忘れさせられそうだった。が、年上といっても、そんなに大差ないのだが、彼は司令官という立場で、しかも母と同じ階級なのだ。
 そちらのほうが、不思議だ。
 エドワード・エルリック准将。
彼は実に不思議な人間だと、自分は思うが、同時に才能に溢れた人間だとも思っている。
 何より、母が信頼をしている。自分の娘と同じ世代の彼を。

「なんか、思いついた」
「え?」
天才と、なんとかは紙一重…
いきなりそうつぶやくと、司令官はスタスタと歩いて言ってしまった。
 一体なんだったのだろう。そう思ったが、それを知るのは数日後のことだった。


「東方司令部一斉試験!?」
 もう二十年以上自分は、兄と共に歩んできた。が、毎回どうしてこうも驚かされるのだろう、と、副官・アルフォンスは思った。
「おう。問題もつくっといた。軍人らしく、武器の名称とか扱い方とか、あとは作戦に関することとか、共通フォーメーションについてとか。あとは、怪我病気の応急処置とか。あ、こっちに関しては、エイジの監修済みな」
「この忙しいのに、いつ作ったんだよ!?」
「5日かけて、じっくりと」
「だから、デスクにいるわりには、完成書類がなかったってわけだね」
 あきれたアルフォンスだったが、すでにできているらしいし、今更意味もわからないが、とりあえずそれを確認することに。
「……」
「なんだよ?」
「いや、すっごく真面目に作ってるな、と思って」
「オレはいつでも真面目だ」
 その言葉を、軽く無視。
「で、採点して、どうするわけ?」
「隊をシャッフル」
「ええっ!?だって、今、すっごくまとまってるのに!?今更!?」
「おう」
「兄さん、隊長がどれだけ頑張って、隊をまとめてるか知ってる!?」
「知ってる。だけど、『隊長のことを、部下はわかってくれてる』っていうその気持ち、一番アブナイと思わないか?」
「兄さんは、僕に対してそう思ってるの?」
「他人が結束するのと、オレとお前は違うだろ」
「そうだけどさ…。兄さんと僕だって別個の人間でしょう」
「信頼してる。そして、たとえば、おまえが行動したことで、オレが死んだってオレは気にしない」
「いや、僕が気にするでしょ…」
 はあ、と溜息をつきつつも、アルフォンスは、ある意味この信頼は嬉しいが、危ないことも確かだなぁと思う。
とりあえず、やってみて、ダメなら戻せばいいか…。
「ああ、もちろん、オレの直属も変更な。おまえ含め」
「っ!?」
 驚きで、アルフォンスの声すら出なかった。
「どういう基準で選ぶかは…わかんねーけどな」
 けらけら、と笑った兄を、アルフォンスは目を見開いたまま見つめた。


「マジ、ですか」
 一斉試験は、各隊の隊長から隊員へと伝えられた。もちろん、内勤のものにも関わる問題なので、張り紙なども用意されている。
 アルフォンスも自分の隊員にそう伝えると、全員が真っ青、というより真っ白になっていた。
「た、たいちょ〜〜!!オレら、今まで勉強なんて、できたためしがないんッスけど!」
「勉強なんてっ…!」
 いきなり、なきつかれて、アルフォンスも苦笑した。
「でも、たぶん士官学校で習うような内容もあるし、まいにち軍にいたら、分かることだ
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