未来軍部11

□キズナって。
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…久しぶりに、准将がヤキモチを妬いた。
 原因は、僕にあるらしいが、今更…とも思うことだ。
 僕の得意といえば、医療錬金術と料理くらい。医療に関すること以外の錬金術はまったくわからないし、准将や中佐のようにオールマイティに錬金術をこなせるわけではない。ある意味、不器用な錬金術師、なのかもしれない。いや、それがフツウのはずなのに、エルリック兄弟がすごすぎるのか。
 …だから、彼、エドワード・エルリックに、僕が唯一勝てるもの、といえば、料理だけ。一人暮らしなので、おすそ分け程度に司令部にお菓子を持っていったり、みんなには足りない程度の量なら、エルリック中佐におすそ分けするのは、いつものことだ。中佐に渡せば、必ず准将にも行くだろうし、准将に渡したら「忘れてた!」と言われてカビが生えた前科もある。
 だから、確実性を狙って、中佐に渡したのだが、それが准将の逆鱗に触れたらしい。

「はぁ」
 エイジが、屋上で溜息をつきつつ、甘めのコーヒーに口をつけた。
「見つけたぞ、エイジ」
 エネルが、相変わらずタバコを咥えて、そこへ現れた。
「まだ、組み手の時間じゃないですよね」
「違うけど。オレだってタバコくらい吸いたいぞ」
「ご勝手にどうぞ」
「って、おまえ暗い」
「僕だって、暗くなることだってありますけどね」
「そりゃ、人間だもんな」
「そうですよ」
 そこで、すぱーとタバコを無遠慮に吸うエネルを、エイジはにらみつけた。
「なんで、タバコ吸うんですか?身体に悪いと分かっていながら。大体、周りの健康にも被害が及ぶというのに」
「じゃあ、おまえも被害者だな」
「当然です」
 にしし、とエネルは笑うが、エイジはむす、としたままコーヒーに口をつけた。
「なんか、エドが荒れてたぞ」
「僕の所為って言いたいんでしょ」
「別にそんなこと言ってねーだろーが。でもいきなり、体術のリーグ戦とか言い出したってことは、エドは怒ってるんだろうな。最初っから、司令官チームとエイジ隊だから」
「僕が、おすそわけしちゃいけないんですか。僕は、スープが余ったから…」
「でも、下心はあったんだろ?アルに渡す、その意味」
「……」
 エネルにそういわれて、エイジは、さらにむす、と口を尖らせた。
「悪いですか」
 けけ、と笑ったエネル。
「いいや、悪くないけど。恋愛は自由だし」
「自由…だけど、やっぱり恋しちゃいけない人はいると思います。…自分のために」
「弱いな、おまえ」
「じゃあ、大尉は強いんですか?」
「んーどうだろうな?」
 首をかしげた瞬間、司令部内の警報がなった。
 二人は、はっとして、ブリーフィングルームへと走ったのだった。



 エドワードの命令により、エネルはエイジ隊からはなれて、先遣隊の一員として、とある山へ登ることとなった。
 エドワードはエイジ隊と共にし、アルフォンスはもう一方の先遣隊として違うルートから山へ登ることになったのだ。

「エイジ」
 視線を向けてもらえず、背中をエイジに向けたままエドワードが呼ぶ。
「はい」
「今は、子供っぽいことはしねぇ。だけど、オレ、許してねーからな」
 そういわれて、エイジは、思わず口角を吊り上げた。
「許されなくてもいいです」
 後頭部だったが、エドワードの唇は、尖っているだろうとエイジは予想した。

 今回、山に登っている理由は、キメラの捕獲だった。キメラの錬成をしたことはいいが、経済的理由で、研究を放棄してそのまま山へ捨ててしまい、野性化、そして凶暴化してしまった、犬と鳥のキメラだった。空を飛ぶ、という情報はあるが、実際にそれを目撃はしていない。
 そして、今回、アルフォンスとエドワードが行動を共にしない理由は、挟み撃ちにできることを狙っているのだった。
「よし、エイジ隊出発。後、頼んだぜ、マーカー」
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