未来軍部11

□sense of family
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「エネル大尉、出張です。小さな村にある、遺跡らしきものの調査になるんですが…」
 エイジに渡された書類は、見覚えのある村の名前が書かれてあった。
「二日、休暇扱いにしておきますから、合計五日です」
 そう、にこり、とほほ笑んだエイジ。
「マジ?」
「はい。マジです。のんびりしてきてください」
 この調査は、自分でなくともできるものだ。なのに、わざわざ自分を選んでくれたのには、実家に帰って家族孝行してこい、というエイジの優しさだろう。
 エネルは、に、と笑って、
「りょーかい」
 と敬礼をした。



 そして、出張の日、汽車を待っていると、「お・ま・た・せ、ジョリー」と声をかけられた。
「うおっ?」
 振り向くと、エドワードが、大きな旅行用の鞄を手にしている。
「おまえ、なんだ!?」
「オレも、エネルの出張に同行するんだ。ちゃんと、アルフォンスには許可を得てる」
「なんで!?いや、オレはうれしいけど」
「遺跡っつーのが気になってさ。なんか、錬金術に関することかもしれないし、なんでもなかったらそれでいいんだけど」
「なるほど。ってか、オレ、実家に泊まるつもりだけど、おまえも来るか?」
「おうよ。おまえのかあちゃんの飯美味いもん」
 にしし、とエドワードは笑った。
「なんでアルは許可したんだろうな…」
「そりゃ、おまえが家族の手前、オレを襲うことはないと思ったからだろ」
「へタレ扱い!?」
「そうともいう?」
 にゃはは、と笑ったエドワードに、エネルはがくり、と肩を落とした。


「つーことで、エドも来たんだ」
 エネルが、簡単に家族に説明すると、エネルの妹、十以上も歳の離れた妹たちと弟が、飛びついてきた。
「アリッサ!アドレー!シンディ!元気だったか?」
 妹たちを前にすると、エネルは急に軍人から兄の顔になる、とエドワードはひそかに思った。
「あんちゃん!久しぶり!エドさんも、久しぶり!」
「おう!」
「ねえ、エイジお兄ちゃんは来なかったの?」
 弟のアドレーの言葉に、エネルとエドワードが苦笑をこぼす。
「アドレー!あんちゃんじゃ不満なのかっ!」
「そういうわけじゃないけどさ〜エイジ兄ちゃんにも会いたかったから」
 そんな会話をしていると、
「さあさあ。二人は汽車で疲れてるのよ。お茶にしようじゃない」
 エネルの母親にそういわれて、一同は椅子に腰かけたのだった。

「へえ、おまえがそんな調査をねぇ」
「ああ。まだ見てないけど、明日は調査に向かおうと思う。ここから、けっこう近いし。自転車で十分くらいだろ」
「近っ!でも、どんな遺跡なんだ?昔から、あったんだからエネル知ってるんじゃねーの?」
「最近出てきたみたいだぜ?そうだろ?かあちゃん」
「私より、アリッサのほうが詳しいね」
 そういわれて、説明役は、長女のアリッサに交代された。
「噂だけどね。ナントカっていう錬金術師が、その洞窟で、実験をしていたんだって。そのとき、爆発させちゃって、洞窟が崩れたんだけど、その行き止まりになっていたところから、遺跡らしきものが出てきたんだって。遺跡遺跡って周りが言うだけで、本当にそうかは、わからないそうよ」
「アリッサ、そのナントカっていうとこ、肝心なんだけど。そいつは、村の人なのか?」
「違うわ。中央から来たとか、北方からきた、とかいろいろ噂だけど。少なくともこのあたりの人じゃない」
「錬金術師でもピンからキリまでいるからなぁ…で、その錬金術師は無事なのか?」
「その爆発の前に、逃げたって聞いたけど。逃げた後に、赤い光が洞窟から漏れて、その瞬間に爆発したって」
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