未来軍部11

□金無垢の終末(後篇)
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 翌日、東方司令部が、驚愕に揺れた。
「司令官、死亡!?」
「まさか!准将が死ぬわけないでしょう!?」
 ガネットとベレッタが、ソニックの言葉に、真っ青になりながら叫ぶ。
「事実だと、エマリ―中将が直々伝えてきたわ」
 一体どういうことなの、とソニックは脱力したように、椅子に腰を下ろす。
「エイジ少佐、エネル大尉、マーカー少佐は、今どこに?」
「おそらく、中央に向かっているのでは、と思いますが…」
「じゃあ、連絡して。軍の回線は使わないで」
「わかりました」

 ベレッタが想像したとおり、三人は軍の車両で中央司令部に向かっていた。
「ノイズ信号です」
 つけていたラジオにノイズが走ったので、エイジがそういうと、エネルとマーカーがそれに耳を傾けた。
「…」
 しばし無言でそれを聞いていると、一同は顔を見合わせた。
「どういうことです!准将が死亡って!」
「だけど、これは、ベレッタ少尉からの連絡です。嘘ではないようですが」
「嘘ではなくとも、間違いだってこともある」
 エネルが、ぷい、と窓の外にたばこを捨てると、アクセルを急激に踏んだ。
「っ!ちょっと、大尉!」
「飛ばすぜ!ロイ・マスタング大将直々に聞いてやる!」
「一歩間違えば、反逆者になりますね」
「すでに、そうだと思います…」
 エイジがぼそ、とつぶやいた。


エマリ―の報告に、ロイは目を細めた。
「何も、雪の中見殺しにする必要もないだろう。エマリ―中将ともあろう者が」
「試したくもなります。ヤツの強運というやつを」
「だが、重傷を負わせて、極寒の地に放置したら、死ぬだろう、たとえ誰であろうと!エドワードだって、人間だ!」
 くく、とエマリ―が笑みをこぼした。
「貴方が、あの男の為に激昂するとは」
「私も人間だ!」
「大総統になるお方が、あんな小童一人に、何を興奮されるのです」
「だが、君自身にも、迷いがある」
 その言葉に、エマリ―はす、と目を細めた。
「ええ。否定できない」
 トン、とエマリ―は胸に手を置いた。その下には、『疵』がある。
「ヤツは、研究を持っていない。つまり、盗んではいない」
 その報告に、ロイは眉間に皺を寄せた。
「…研究内容は、エドワード・エルリックではなく、おそらく弟のアルフォンス・エルリックが持っていることでしょう」
「では、なぜ、アルフォンスを追わなかった?」
 エマリ―は、無言で踵を返す。
「貴方が軍(ここ)にいるから、エドワード・エルリックも軍(ここ)にいる。そして、兄がいるから、アルフォンス・エルリックも軍(ここ)にいる。兄がいる場所に、弟は必ず戻る」
「では、なぜ君は中央にいる?」
「部下を、残らせてます」
 そこへ、バン、と荒々しく扉を開き、どかどかと駆けてくる三人の男たち。

「大将!」
 現れたのは、エネル、エイジ、マーカーだ。
「どういうことです!エドが死んだとは!」
「ちゃんとした情報を!」
 エネルとエイジがそうロイに詰め寄るが、マーカーは静かに視線をエマリーに向けた。

「エマリ―中将に尋ねたほうが、よいように思いますが」
 マーカーの言葉に、エイジとエネルが一斉にエマリ―を見た。
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