未来軍部11

□銘と命
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「ここ数カ月の間、各地で、テロが相次いでいることについて…」
 中央に各司令官たちや上層部が集まり、会議をしていた。
「ぐが…」
 真剣な顔を突き合わせているというのに、一人だけいびきをかいている者がいて、副官は頭を抱えた。兄さん、と言いそうになって、あわてて言い換える。
「准将…」
「んあ?」
 目を瞬かせて、顔をあげると、いかつい顔をした将軍たちがこちらを見ていた。
「東方司令部、エドワード・エルリック!貴様、たるんでおるぞ!」
 バージェス中将が、叫んでいるのも構わず、エドワードは大あくびだ。
「ふわぁあああ…すんませ〜ん。最近、寝てないもので」
「テロ対策会議くらいマジメになれ!」
「でも、そんなことで今更あわてるの、可笑しいだろ?」
 エドワードが、す、と金に輝く目を細めた。
「新しく大総統が立つときは、やはりゴタゴタするもんだ。お祭り騒ぎになったり、さらに、反発してみたり」
「だから、こうして対策を練っておるのだろう!?」
「そっか。そうだよな。でも、ちゃんと見極めたほうがいいぜ?軍に内通者がいる可能性も捨てられない」
 しん、としたその場所で、エドワードは、微かに口角をつりあげて踵を返した。
「眠いんで、今日は帰りま〜す。明日の会議はマジメにでま〜す」
 そういうと、エドワードはスタスタと出て行ってしまった。
「す、すみません。代わりにわたくしが」
 アルフォンスは、申し訳なさそうに頭を下げた。


「もう、兄さん!」
 ホテルの部屋のベッドで横になっていたエドワードに、今帰ってきたばかりのアルフォンスが、掛け布団をはぐった。
「んだよ〜ねみいもん…」
「もう十分に寝たでしょう!」
「おまえも、寝る?」
「えっ、お誘い!?珍しい!」
 喜んだのもつかの間、兄は、さっさと起き上がって、伸びをしていた。
「なんで、僕一人…」
「寝るのは一人でも寝られるだろ」
 にしし、と笑った小悪魔を、アルフォンスは睨みつけた。
「一応聞いておくけど、どうだった?会議」
「どうもこうもないよ!いろいろ押しつけられたからね!」
「何を?」
「テロ対策委員会実行委員長!」
「なんだ、その学級委員長みたいなの」
「兄さんが中心となって、全国のテロ対策をしろってことだよ!次期大総統なんて、『いいじゃないか。鋼のが委員長…ふ』ってうすら笑いだよ!?」
「無能のうすら笑いはキモイが、いいんじゃね?」
「何かあったら、兄さんの所為になるんだよ!?なにもかもしなきゃいけないんだよ!?」
「アルフォンスくん。それは言い換えたら、好きなことができるってことじゃないかね?」
「できるわけないでしょ…准将階級がっ!ただでさえ、いろいろ中央のお偉いさんたちに使われてるんだし」
「だって、バックには無能大総統がついてんじゃん。つまり、軍の膿をいいタイミングだから、一掃しちゃおうぜ、計画だって。まあ、こんなことで、全部は出せないだろうけど」
「だからでしょ!だから、僕はイヤなんだよ!兄さんが危険にさらされるでしょう!」
 エドワードは、ガリガリと掻いていたいた手を止めて、弟を見た。
「心配、してたんだ」
「僕は、いつでも兄さんの心配しかしてないよ!」
「ごめん。それは、悪かった。大丈夫、オレにはおまえがついてるし、オレの部下は優秀だ」
 ぽん、とアルフォンスの肩をたたく。
「マーカーに、中央司令部に潜入してもらってる。変装して。エイジは研究室。みんなで、中央にやってきた甲斐があるってもんよ」
「確かに、エネル大尉も連れて来てるから、東方は大丈夫なの、って感じだけど…」
「東方は、ソニック准将とガネットとベレッタ少尉置いてきたし」
「ある意味、一番の貧乏くじひいたよね、あの三人は…。ま、いつものことかもしれないけど」
「にゃはは」
 兄は、スタスタとバスルームに向かっていく。
 そして、ちらり、とアルフォンスを覗き見て。
「一緒に、入る?」
「入るよ!僕も、貧乏くじ引かされたもん!いろんな、将軍に嫌味は言われるし、ねちねちくどくど言われても、小さな反論しかできなかったんだからね」
「はいはい。愚痴は風呂場で聞いてやるよ」
「体でね!
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