未来軍部11

□双頭の合成獣(キメラ)
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「まて!エルリック准将!貴様が行く必要はない!エルリック中佐を向かわせろ!」
 近くにいたアルフォンスは、「はい」、とそれを了承するが、
「まて、アル!おまえが行く必要は――」
「アルではない。エルリック中佐だ。貴様は、弟を一人の軍人として認めてないのか」
 そういわれて、エドワードはぎりり、と唇をかみしめた。
「癖だ!」
「だったら、ただちに治せ。いつまでも、“かわいい弟”でいさせるな。ヤツは、もう“オトナ”だろう」
 エマリ―にそう言われて、エドワードは閉口した。
「では、行ってまいります」
 アルフォンスは、敬礼すると、踵を返してさっさと行ってしまった。
たった今、テロ組織の潜入場所に、乗り込むことを命令された。中央の小隊を使い、アルフォンスが指揮をするという。

「どうして、オレじゃいけない!?」
「貴様は、エルリック中佐の良いところを、すべて潰しておる」
「――!」
「優秀だと知りつつも、それを隠している。他人に知らせて、それを認めさせねば、やつは一生おまえの陰に居続けるだろう。それでもいいのか」
 エドワードの目がますます見開かれた。
「大事にしすぎるのも問題だ。それによって、おまえが前に出て、さらに弟は自分の不甲斐なさを感じるだろう。信用しろ。おまえの弟を」
 ずかずかと、エマリ―の声が体に侵入してくる。

「待つことも、我慢することも、貴様には必要だ」
 何も言い返せず、エドワードは踵を返した。
「まて。貴様には、違う仕事に行ってもらおう」
 ひらり、と一枚の書類を投げ渡された。


 言われた通り、壊れた数か所をエドワードが修復するように言われた。両手を叩いて、手をかざしたら、それらは元に戻る。
 周りからは、驚きや好奇のまなざしを向けられることもしばしば。
 そして、異端的な目で見られることも多々ある。今も、下士官たちのそんな視線を背後で感じつつも、両手を叩く。
 今日の、復興場所は比較的小さな爆発で澄んだ場所だった。なので、建物や周辺の敷石を直したら、それで終わる。
「…これか」
 そこには、同時爆破に使われた、錬成陣の破片が残されていた。
 初めて見る錬成陣だ。あの、ピット元大尉が持っていた研究書は、エマリ―が保管しているが、エドワードの脳内にも存在している。
 それに、なぜ、爆発の度合いが違うのだ。
 それは、距離と関係しているのだろうか。

 逮捕された、ピット元大尉やロットン元准将の取り調べ、バージェス中将の話でもまったくその話はでてこない。ましてや、三人とも錬金術を使えるという話は出て来ていない。関わりのあった、テロ集団に、錬金術師がいたのかもしれない。
 今日、アルフォンスの調査でわかるだろうが…。

 エドワードは、ふう、とおおきく息をはくと、「お疲れ様です」と声をかけられた。
「エイジ…」
「昼食、まだでしょう」
 そういうと、エイジがコーヒーとランチボックスを渡してくれた。自分の分もあるようで、一緒に食事をすることにする。

「どうしました?顔色、悪いですね」
「寝てないからだろ」
「本当は、中佐でしょ」
「なんで、知ってんだよ」
「今日の任務、エネル大尉も同行したんです」
「…そっか。…中将にさ、オレがアルをつぶしてるって言われてさ。ちょっと…な」
「貴方が前に出るのを、中佐は一歩引いて見ているのは、貴方を信用しているからですよ。心配しているけど、でもやっぱり無条件で、中佐は准将を、信頼している。そして、そこで貴方は力以上のことを発揮してしまう。それが、エルリック兄弟なんじゃないですか」
「それが、アルのいいところを潰している、になるんだとよ。アルにだってできるとこを、『できない』とオレが否定しているようなもんだ。そこで、アルは自分の不甲斐なさを思う、と…」
「それも一理あるのかも」
 エイジにもそういわれて、エドワードはむう、と口をとがらせた。
「だけど、中佐に任せるところは、任せてますよね」
「そりゃ、あいつは、なんでもできるしな。やっぱり、オレにとっては、アイツは守るべき『弟』で、それをあいつが嫌がってるのも、わかるんだけど、だけど…」
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