未来軍部11

□蒼い風
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戦ってくれたひとがいる。


蒼い風

「遺体を収容し、身元を照合しろ。それが、おまえの仕事だ」
 中央のロイ・マスタング大将に命令された。
 近くにいた、アルフォンスは目を見開いて、その命令を疑った。
“戦場を知れ”
 前線経験がないとは言わない。以前にも、前線配属されたことはある。停戦に持ち込んだが、すぐにそれは再戦となり、またも戦火は繰り広げられていた。
「エルリック准将は、東方司令部司令官です!なぜ!」
 アルフォンスの叫びに、エドワードは重くため息をついた。

「試されることは好きじゃないが、必要なら致し方ない」
 立ちあがったエドワードに、ロイは
「大人になったな」
 と感心する風でもなく、眉間に皺を寄せたまま、つぶやいた。

 ぎゅっと拳を握って、痛みに耐えている弟を、悲しげな表情で見る。
「アルフォンスは、司令官代行を務めておけ」
 大将の非情ともとれる命令。
「兄一人、前線へは行かせられない!」
「命令だ」
 強くそう言われて、アルフォンスは黙りこんだ。
「っ…」
 軍とは、そういうところだ。
 上官の言うことは、絶対。
「しんぱいすんなって」
 エドワードの言葉に、アルフォンスは何も言わず、ただ命令を下したロイをにらみつける。

「配属期間は一週間。今から出向しろ」
ロイの命令に、エドワードは滅多にしない敬礼で、了解をした。


「兄さん…」
 駅で、心配そうにただ自分を見つめる瞳に、エドワードは苦笑をこぼす。
「大丈夫。生きて帰る」
「それだけじゃない。任務内容も…」
「大丈夫。おまえに、オレの遺体は、集めさせることはしない」
 そう明るく笑って。

 二人の長い長い一週間が始まろうとしていた――
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