未来軍部11

□軍服小物小話
1ページ/3ページ

「やべっ!インナーのシャツ忘れたっ!」
 組み手の後に、シャワーに入ったことはいい。着替えを忘れた。
「ってか、ロッカーにすらなかったはず」
「准将ですか?」
 独り言を言ったはずなのに、隣のシャワー室から声をかけられた。
「おお、エイジ!いいとこに!」
「茶色のハイネックインナーならありますけど。ロッカーから持ってきますよ」
 エイジはもうシャワーを出るらしく、水気を拭っている。
「頼むわ〜」
 

「あれっ?」
 司令官執務室に戻ったエドワードに、アルフォンスは
「どうしたの、このインナー!兄さんはシャツしか持ってないはずだよ!?」
「おう、忘れたからエイジに借りた。これ、動きやすいんだなぁ。初めて着たけど」
「新しいの、おろしてあげるよ!」
「なんで、いいじゃん。もう借りたし、洗って返せばいいだろ」
「そうだけどさ!兄さんには、Yシャツがいいよ!」
「なんでだよ…」
「え、いや、その…」
 じろ、と睨まれて思わず口を閉じてしまったアルフォンス。
 案の定エドワードは、ジャケットを羽織ることなく、髪の毛をタオルで拭っている。
「せめて、ジャケット着たら!?」
「暑いし」
「で、でもさ!」
「いいじゃん、別に〜」
 強くは言い返せず、アルフォンスはすぐに呼ばれて自分の隊の元へ向かったのだった。
「さて、飯でも食ってから、書類しよっかな」
 エドワードは、髪を下ろしたまま、食堂へ向かったのだった。

「うおっ!どこの美少女かと思ったら、もしかして!」
 背後でそう言うのは、振り向かずとも分かるが、険しい顔で振り向いてみた。
「…振り向いても美青年だろ」
 ノーを言わせない表情で睨まれて、エネルは「は、はい。もちろん」と返事。
「珍しいじゃん、そのハイネックのインナー。ピチピチしてて、体の線まるわかりだけど」
「エイジに借りたんだ。初めて着たけど、着心地いいな」
「おう、オレも昔は愛用してた」
 そんな話をしながら、二人で食事を始めると、ふと窓の外を見たら、雨が降ってきている。
「夕立かな」
 その時、雷鳴がとどろき、ざあっとバケツをひっくり返したような雨音が聞こえる。
「こりゃ、ひでぇな」
 ほぼ、食事を終えて、立ちあがろうとした時、司令部内の赤色ランプが点灯した。
『憲兵司令部より通達!829テロ容疑者らしき男を発見。至急現場――』
 エドワードが瞬時に立ちあがった。

「現場に急行する!アル!行くぞ」
「まって!コートだけは羽織っていって!」
 雨が酷い為に手渡された黒いコート。
 エドワードは、それを羽織って、現場に出動した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ