未来軍部11

□軍内広報誌
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「しゅざい〜?」
「はっ。各司令官の人物像などを載せている連載なんですが、今回、東方司令部のエルリック准将にも、ご協力していただきたく」
「明日でいいの?」
「はい、もちろんです」
「じゃあイイヨ」
「よろしくお願いします!」
 一人の士官が敬礼すると、エドワードはひらひらと手を振った。


「ああ、広報誌のヤツだね。ウチにもやっぱり来たんだね」
 アルフォンスがそういうと、今までの連載の載った広報誌を渡された。
「うっわ〜みんな、マジメな顔で映ってるなぁ…」
「いつもみたいに、へらへらしてちゃいけないってことだよ。各司令官は、みんな指揮してるとこだね」
「軍人っぽいよな」
「軍人だから」
 アルフォンスは苦笑した。
「准将はどうするの?」
「A号なでなでしてるとこ〜」
「そんな写真が載せられるか!」
 そう一蹴されて、エドワードはちぇ、と口をとがらせた。

「聞きましたわ〜!エドワード様ぁあああ!」
「「きたーっ!」」
 バン!と執務室の扉をあけられ、飛び込んできたのは、イシュバールキャンプ地から戻ってきた、アレクシア・ブノワ=レヴィ大佐。相変わらずな、派手なピンクの改造軍服に身を包んでいる。そして、手には、真赤な改造軍服。衿にはフリルがあしらわれ、しかも、金色の肩章を見たら、准将。つまり、
「軍内広報誌には、この衣装で望まれることがよろしくてよ!」
 やっぱり、とエドワードとアルフォンスは、疲れたように脱力した。
「ヤだね。暑そうだし。それだったら、タンクトップで訓練してるとこにしようか――」
 な、と言おうと思った矢先、
「ジャケット着用なら、許可しますがね」
 と副官の声が飛び込んできた。
「なんでだよ…」
「やっぱり、この赤の軍服ですわよ〜」
「ヤだっ!」
 ぐいっと押しつけられた瞬間に、エドワードはレヴィのスキをついて、逃げだした。
「あ!准将!書類!!」
「ああん、エドワードさまぁあ」
 そんな二人の声を無視して、エドワードは、執務室を飛び出した。

逃げた先は、やっぱりエイジ隊待機室だ。
「どうしたんです?慌てて」
「オレに、今、安らぎの時間なんてねーんだ!」
 どか、とエネルのデスクに座りこむ。
「ああ、お嬢様大佐が戻ってきたからか」
 エネルが、にしし、と笑ってエドワードを小突いた。
「聞いたぜ、エド。広報誌、今度は東方司令部の番なんだって?」
 ここにもやっぱりある、軍内広報誌の前号。
「みんな、指揮してるとこだろ?明日に、一斉訓練予定もねぇから、A号といちゃつこうとしたら、ダメだって言われてさー」
「ダメでしょ、それは」
 エイジも苦笑した。
 エドワードは、何気にその軍内広報誌の前号をぱらぱらとめくる。
「おおっ!次期大総統のにやけたツラ発見!」
 執務デスクの椅子に座って、に、と口角を釣り上げて頬笑む、黒髪の大将を見つけて、エドワードは、エネルのデスクにあった油性ペンできゅ、きゅ、と落書き。
「…髭はやっぱお約束なんだな」
「やっぱ必要だろ、貫禄は」
 エネルとエドワードの会話で、エイジは髭を描いたことは想像できたが、一応エドワードの手元を覗き込んだ。
「髭って猫ひげ!?」
「貫禄、貫禄」
 くしし〜とエドワードは楽しげだ。
「その写真けっこう人気があって、女性たちは、こぞってその広報誌を手に入れたっていう噂があるんですよ」
「こんなのを!?」
 エドワードは、あらためて手元のニヤけた大将の顔を見る。
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