SP(エスピー)

□SP5
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「どういうことですか!」
 翌朝、緊急会議で学園の教師が集まった。掲示板に張られた、写真をめぐっての議題だった。
「貴方は、秘書でしょう!まさか、学園長となんて…!汚らわしい!」
 年配の女性教師にそう言われて、アルフォンスは小さくため息をついた。
「おちついでください、先生」
 リザ・ホークアイがそういうが、他の教師たちも年配教師と同じようなことを思っているに違いない。
 議題になってしまった、写真というのが、休暇中の二人。しかも、プールの中で抱き合っている写真だ。
「何かいったらどうなんです!学園長!」
「確かに、終末に秘書と休暇を過ごしました。それは、打ち合わせがあったからだ。そして、その写真ですが、彼、溺れたんですよ」
 にっこり、とアルフォンスが頬笑む。
「彼は泳げないのに、落ちていた本を拾おうとして、落ちた。そこを助けた時に撮られたようですね」
「本当ですか!?」
 次にエドワードが睨まれた。
「ええ」
 きらり、とエドワードのメガネが光る。
「昔から、私は泳げませんから。まさか、そんな不格好な姿を学園長以外に知られてしまうなんて、羞恥のほか何ものでもありませんね。そんなことに時間を費やすより、次に行われる体育祭の打ち合わせをしたほうが良いように思います」
「しかし、生徒たちは、勘ぐっている様子!」
「だから、なんです?」
 エドワードが、キ、とそういう教師を睨むように、視線を動かした。
「そんなことで、大人たちが騒ぐ必要もないでしょう?」
「くっ…」
 何も言えることもなく、議題は、エドワードによってすり替えられていった。



「クスクス、さすがだねぇ。有能秘書さん」
 学園長室に入るなり、アルフォンスに笑われて、エドワードはむす、と口をとがらせた。
「おまえが、あんなトコでサカるから、こんな目に…」
「だけど、誰があれを撮ったのか、だね」
「オレ、心当たりあるから、言いにいってくる」
「え?」
 すぐにエドワードは踵を返して、学園長室から出て行くとそのまま、生徒会室へむかった。
「やっぱり、いらっしゃいましたか。エドワード先生」
 にっこり、と笑った相手は、セリム・ブラッドレイだった。

 机に広げられている、無数の写真。その一枚を手にし、エドワードにむけた。
 その写真は、プールの中でエドワードののけぞった首筋に、唇を置いているアルフォンス。下腹部は密着している。
「趣味、わりィぜ」
「興味あったんです。リン皇子をフってまで、貴方が愛する相手が」
「なんで、オレのことをそこまで気にする?」
「だって、貴方――エドワード・エルリック、でしょ?」
 す、と、セリムの赤みのかかった黒の瞳が光ったように見えた。
「エルリック家の嫡子だった。それを捨てたのは、崩壊したエルリックに居たくなかったから?」
「…崩壊?フン、立派に後を継いでるだろうが。弟が」
「では、認めてるんですね。兄弟で、こんなこと、してること。それを、この学園だけじゃなく、世界に配信することだって、できますよ?」
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