中央編E

□中央編123 潜入捜査
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「ホンキですか?そんなもの、下士官に調査させて、逮捕でいいじゃないですか」
「ダメだ。オレの親友の名前がかかってる。大丈夫だって、おまえらが復帰した日から潜入に入るから。それまで、書類は溜めない自信がある」
「普通は溜めないモノなんですよ」
 と、言いたくないが、言ってしまった。
「とにかく。潜入は早く終わらせるための手段でもある。ま、一週間司令官不在は見てくれ☆」
 エドワードが、にこり、と頬笑んだので、アンダーソン兄弟は、硬直してしまった。

 …だが、ノーと言った所で、彼の考えが変わるはずもない。

 諦めた二人は、ふらり、と立ちあがって。
「とりあえず、仮眠室に行きます」
「右におなじ」

 そういうと、同じような歩き方で、ふらふらと行ってしまった。



「…ナニそれ。僕まで巻き沿い?」
「おまえは、エイジがそんなふうに名前を使われて、気持ち悪くねぇのかよ!」
「気持ち悪いよ!憤りを感じるよ!」
「だろ?まあ、オレとユンで潜入でもいいけどな」
「…わかった。僕も、とりあえず、一週間は休暇を取る。明日、すべて調整してくるよ。西の方面に家を一軒借りておく。そこに住む兄弟っていうより、夫婦のほうが、いいよね」
「え、兄弟でいいじゃん」
「ダメだよ。お涙ちょうだい的にするには、やっぱ夫婦だって!兄さんが、怪我をしていて、僕が心配して、そこへワルモノが声をかけて――っていう手筈でどう?ああうん、そうだな――事故で怪我をアピールしたほうがいいかもしれないね。その方が、相手も気づきやすいだろうし」
「なんだよ、おまえもノリノリじゃん」
「ふふ。一週間でも、兄さんと二人で、ラブラブ潜入って、燃えるじゃんっ」
「シチュ萌えかよ…。しょうがねぇな。B号も連れてくか」
「あ、そうだね。エイジさんたちいないんじゃあ、仕方ないね」
「ユンじゃあ、アレルギー出ちまうしな」
「そうだね。じゃあ、いろいろ準備しなくちゃね」
 結局、アルフォンスもノリ気らしい。


 そして、二日後――

「こんにちは。今日からこちらに引越してきました、アルフォンス・ホーエンハイムです。そして、妻のエディです」
「こんにちはー」
 年季の入った服は、ところどころ当て布がされており、髪も手入れがされていないような、くすんだ金の色に錬成し、頬には、そばかすを描いた。頭には、大き目のバンダナをあてて、エドワードもアルフォンスもにこり、と頬笑んだ。
「まぁ、こんにちは」
 近所の生活レベルと、同じくらいに見えるようにする。一般家庭よりやや貧乏、といった言い方が適切かどうかは分からない。自分たちが子どものころは、田舎の所為か、このような感じだったと思う。ただ、衣服などの身なりだけは、母がキチンと綺麗にしてくれていたが。

 夫婦が、仲睦まじく過ごし、近所との関係も良好。そのような状態を作りあげて、三日目のことだった。
「こんにちは、ホーエンハイムさん。クッキーを焼いてみたんだけど、お口にあうかしら」
「わぁ、ありがとうございます。クッキーなんて、久しぶりです」
 なんて、にこり、と頬笑むアルフォンス。そこへ、

「キャアアア!」
 近くの通りで、エディの声が響き、アルフォンスが駆け付ける。
「エディ!?」
 クッキーをくれた隣のおばさんも、何事かとかけつける。いや、近所にいるほとんどの人間が、駆けつけていた。
「バカヤロウ!そっちが、飛び出したんだ!オレはしらねぇ!!」
 車の運転手は、さっさとスピードを上げて行ってしまった。

 …アンダーソン弟の見事なカースタントと、エドワードとアルフォンスの演技、そして、錬金術の使用により、事故を作りあげたエドワードは、まんまと、両足を骨折という怪我をも作りあげた。
 ギャラリーも大勢いたので、アピール度はあっただろうと、予測する。

 そして、翌日、今にも壊れそうな、ボロボロの車いすに乗ったエドワードは、暗い表情で、クッキーをくれた隣のおばさんと目を合わせる。
「え、エディさん…」
 エディは今にも泣きそうな笑みで、
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