中央編E

□中央編124 ケンジャ ノ イシ
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「また、サボりに来てるぜ、エドのヤツ」
「ソル、相手してあげて」
 そう笑うと、ソルが「あう」と返事をしたような気がした。

「少将、またサボりですかぁ?」
「サボってねェし。これも仕事だし」
「じゃあ、なんの用事ですか」
「ソルの成長を見守る仕事♪ソルちゃあ〜ん。体重増えましたかー☆」
「うっわ、おじいちゃんキター」
「じいちゃんじゃねェしっ!!!」
 経験値だけ見たら、それくらいありますよ、とは思ったエイジだったが、エドワードがソルを抱っこして、目尻を下げているのを見て、くすり、と笑う。

「エドは知ってんのか?アリッサとユンのこと」
 いきなりそう言われて、エドワードは返す言葉も忘れ、目をぱちくりさせた。
「でええっ!おまえ、ついに知ったのか!?もう、泣いたのか!?」
「はあ?なんだよ、泣いたって…」
「だって、お前が泣くのを見たかったんだもんよー!」
「ああ、そういう意味か。泣いたってしかたねェよ、あいつも年頃になるし。っつーっても、まだ結婚はさせねェからな!」
「ユンでよかったよ。まだ、十代のアリッサを大切にしてる。ちゃんと、待ってるし、待てる男だぜ、あいつは」
「…はぁ〜アリッサがなぁ…。ってか、年の差ありすぎだろ!?」
「ユンっていくつだっけ。オレよりひとつ上だったっけ?」
「でも、まぁ、しょうがねェかぁ。うん…アリッサがユンのモノに…ぐああああ…なんか、えぐられるぅうう!」
 大げさに胸を抑えたエネルに、エドワードはソルを抱っこしながら、
「おまえの父ちゃん、アホだな」
「アホですね」
 エイジまで同意見らしい。
「アホ言うなぁ〜!」
「あうー」
 同じようにソルの喃語が発せられ、一同は笑い合った。

「それで、ホントに来た理由はなんですか?」
 エイジにそういわれて、
「おう。おまえの名前が悪用されたし、赤い水の調査も始まったことの報告。あいつ、殺されちゃったし、口封じだと思うんだ」
「そうでしょうね。そもそも赤い水とはどういうものなんですか?」
「うーん、簡単にいったら、賢者の石の未完成品の一種、かな」
「そりゃまたザックリとした説明ですね」
「ま、いずれ教えてやるかもな。あと、国家錬金術師の名前が悪用されたことについて、いろんな波紋が。国家錬金術師廃止するという考えやら、もっと高いレベルにするために、さらに試験を受けさせろとか、一年ごとの試験では足りない、年に二回にしろとか…。悪用されたおまえの意見はどうだ?」
「現状維持でいいのでは、と思いますが。それは、大総統の意志にまかせます。国家錬金術師じゃなくとも、食べていけますし。ソルひとりくらいなら金銭的に育てられる自信はあります。あ、ジョリーもついでに」
「オレだって多少の稼ぎはあるかんな!」
「ええ――まぁ」
 そんな二人に、エドワードは口角をつりあげた。
「少将の意見はどうですか」
「なくていいだろ、こんなん。錬金術師は大衆のためにあるはずなのに、軍のために動くのはオカシイ。オレはこのシステムを利用して、生きてきたけどな」
「貴方も、大総統の意志にまかせるということですね」
「まぁな」
 エドワードは、抱っこしていたソルをエイジにわたして、
「これから生きる人間が、幸せになるためにこの国はどう歩むべきか――場合によっては、大改革も必要かもしれん。多少の反発がでようともな」
「それは――軍を無くす、ということも含め、ですか」
「だな」
 エドワードは、にっと笑って、「じゃあな」と、診療所の扉から出ていった。


「ただいま〜」
 中央司令部に戻ったエドワードに、
「どこほっつき歩いていたんですか!会議の時間が過ぎてますから!」
「会議室へ行ってください。これ、資料です!ってか、ジャケットどうしたんですか!今日は、大将が集まる“幹部会”ですよ!?ってか、髪もぐしゃぐしゃですけど!」
 アンダーソン兄弟とユンに押されたり、ジャケットを着せられたり、ばたばたしながら、エドワードは会議室までの廊下を足早にあるかされていた。
「明日じゃなかったっけェ?行きたくねェ〜」
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