中央編E

□中央編124 ケンジャ ノ イシ
3ページ/10ページ

「そんな駄々こねてる場合じゃないですからね!はい、これとコレ!」
 資料やら持たされて、会議室の扉が開かれた。

 開いた瞬間、ぎろり、と睨むように見られ、大将、中将クラスの人間が集まっている場で、エドワードは、へらっと笑って、
「遅れてすんませ〜ん」
 と、席についた。そんな言い方に、アンダーソン兄はその後ろに立ちつつも、ハラハラしていた。

「会議の本題に入る前に――エルリック少将」
「はい?」
 中央司令部最高司令官という名前だけの大将が、そこにいた。
「君は、いつになったら、時計が読めるようになるのだ?」
 そこで、失笑する他の大将や中将に、エドワードは、ふ、と目を細め、綺麗に口角をつりあげた。髪を、無駄に、跳ねあげてみたりする。
「すみませんね。大総統が、オレを離さなかったものですから。よほどイイみたいですよ、オレ」
「――っ」
「だ、大総統の名前を出せば、丸く収まるとでも思っているのか」
 そうした中将に、
「おためしになられます?」
 ふふ、と笑ったエドワードの唇に視線がいっているのが、アンダーソン兄にもわかった。
…ホントに色気を操作できる人だ…と、思っていた。
 何か、スイッチがあるのかと思うくらい、色気オーラを操作している。今は、半分ほど。だが、全力を出したら、ノーマルな人間ですら、コロリ、と寝返ってしまうかもしれない。
 
「さて、無駄な議論はやめて、本題に入りましょう。個人的にお詫びの欲しいかたがいるのなら、それもあとで――」
 に、と笑ったエドワードに、中央司令部最高司令官は、ごほん、と咳払いをして、本題の話をし始めたのだった。




 会議が終わったのは、夕方六時を過ぎたところだった。
「無駄になげェから嫌いだ。この、“幹部会”は」
 幹部会というが、これは通称だ。嫌味を含めたいい方だったりする。
「お疲れ様です」
「おう、ハークもおつかれ。おまえ、ずっと立ってるから、疲れるだろ」
「いえ、貴方の発言に、ハラハラしっぱなしで、そちらが疲れます」
「んだよ、オレを信じろよな」
「基本信じてますよ。ですが、貴方の言い方、やり方が、あまりにも私と違うものですから、ハラハラしっぱなしなんです」
「オレと一緒のやり方するやつなんて、いねェよ。あ、アルくらいかな」
「貴方の弟なら、やりかねませんね」
「つーことで、オレは帰るぞ」
「本日、書類を見たのは、五枚だった気がしますが」
「だって、明日アルは、帰ってこないから、今日のウチにラブラブしとかねェとさ」
「…そうですか」
「そうなの。じゃ、お疲れさん。――マリアン、帰るぞ」
「はい☆」
 身を潜めていたマリアンを呼び、エドワードは、執務室に寄ることなく、そのまま司令部を後にしてしまった。
 アンダーソン兄は、はぁと、溜息をつき、廊下を進む。
 執務室隣の大部屋に、単独で帰ったアンダーソン兄に、弟から「どうして単独なんだ」と責められてしまったが。



「おかえり」
「ただいま。おまえ、早かったんだな」
「うん。ご飯できてるよ」
 久しぶりに、アルフォンスの手料理がならんでいて、エドワードもふわり、と頬笑む。
「うまそ」
 そういうと、エドワードは、足元にやってきたB号を抱きあげて「ただいま」とキスを送る。
「にゃお」
「ん〜〜B号カワイイにゃあ〜おまえは〜〜」
 ぐりぐりと頬を寄せるエドワードに、B号は嫌がるようにそっぽをむいて、行ってしまった。
「B号に嫌われたぁああ〜」
 と、泣きの入ったエドワードに、アルフォンスは苦笑して、「食べよう」と誘った。

「明日、おまえ、帰ってこねェんだよな」
「その言い方なんか、ヤだけど、大総統ついでに出張だよ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ