中央編E

□中央編 司令官さまさま
2ページ/2ページ

「はあ?」
 何を言っているんだ、この人は。

 と、思ったが、あっという間に、形勢逆転をし、さらに、全滅と言われていた三隊は、まるでゾンビかのように、そこで発砲していた。
「たしかに、訓練だから、死にはしない。けど、無線内容が相手にも盗まれている可能性のある場合、嘘が飛び交っても、こっちには、暗号があればそれは事実として、相手に伝わる」
「…私にナイショでその暗号を?」
「うん。司令官、助けて〜的な」
「?」
「撤退命令を、という一言。その前の言葉は、反対の意味を成す。全滅は、元気溌剌ってワケ」
「そんな、身内を騙して…」
「敵を騙すのなら、まずは身内から。もちろん、知らなかったのは、おまえだけだけどね☆」
「ひどいです。仮にも、貴方がいなくなったら、私が全責任を取らなければならない立場だったのに」
「いなくなるときは、勝ちを確信した時だな」
 そんな言い方をする司令官に、アンダーソン弟はため息をついた。
 さっきまで、腰が痛いだの、ダルイだの文句ばっかいっていたというのに。昨夜の大総統秘書官の所為で。
「さて、今回のゲリコマの、反省と問題点がわんさか出てきた。みんなにまとめておくようにっていっといて。そんで、オレもそれを出しておくので、全員に回すように」
 そういうと、インカムをぽい、と放り投げ――アンダーソン弟が思わずキャッチしていたが――行ってしまった。
 アンダーソン弟は、司令官仕様のインカムをしばし見つめる。
 そのインカムの耳あて部分から、何やら聞こえる。
『…聞こえますか、エルリック少将!終了してもいいんですよね!?撤退しますよ、ホントの意味で!』
「……」
 ユンの声が聞こえ、その後に、
『それで、勝敗はどっちについたのでしょうか。なんだか、消化不良なカンジがしますが…少将』
 自分の兄、ハーキュリーズ・アンダーソンの声も聞こえる。
 たしかに、形勢逆転、と思ったが、勝敗らしいものがついていない。つまり、中途半端だ。
 勝敗を付ける必要はないからだろうがー―
「ユン少尉、ハーク。司令官は、すでにここにはいない」
『『ええっ!?』』
「撤収しても文句は言われないと思うがな」
『〜っ!全軍、撤収!司令官逃亡中!』
 アンダーソン兄の声を聞いて、弟は、はっとした。

…そう。もっともらしいことを呟いていったが、要は逃亡したのだ。
「あの猫め…!」
 アンダーソン弟も踵を返して、司令官の後を追ったのだ。




 逃亡した猫は、二時間後に、捕獲。
 すぐに、実地訓練の問題点と反省を書面で上げる為に、徹夜した模様。翌日の会議――“幹部会”を交えた上層部会議――では、やっぱりもっともらしいこと言っていたので、アンダーソン兄弟とユンはなぜか腹が立ったのだった。


真面目なんだか不真面目なんだか。
アタマイイんだか、ワルイんだか。
わかってるのか、わかってないのか。
 それが、エドワード・エルリックたるゆえん。

いや、芯ではちゃんと考えてます。――たぶん。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ