中央編E

□中央編126 金ネコ肉キュウ便
3ページ/5ページ

「復帰しないか、と誘っておる」
 そこで、エドワードは、目を見開いた。
「ちょっとまてよ。オレは反対だ!自分の意思ではないにしろ、エネルは軍から離れて、幸せなはずだ!それなのに、どうして、また軍に戻す必要がある!?」
「彼を必要としているからです、エルリック少将」
 秘書官が、そう伝える。
「我々、大総統府は、中央司令部と綿密に繋がりがある。――と、思われていますが、実際は、大総統と司令官の繋がりであって、その上層部とは、繋がりがありません。こちらは、そちらの上層部――貴方がたは幹部会とおっしゃってますが――の内容を知りたいのです。だが、仲よくしましょうと言ったところで、それは表面のみ。そこで、“内密”につなげていただく役目(特殊部隊)が欲しいのです」
「って、それは“ウラ”でってことだろ!?」
「ええ、言い方を変えれば、スパイ――ですかね」
「内密なら、マリアンでもいいだろ」
「ジンデル中尉には、貴方を護衛するという役目がありますので」
「もう必要ねぇだろ」
「もう、なんてことはありません。これから、もっと護衛が必要となるかもしれませんし」
 そんな言い合いをしている中、エネル本人は、
「一回、持ち帰っていいッスかね〜大総統。オレ一人じゃ、きめらんねぇ立場なんで」
 そこで、エドワードも、アルフォンスもはっとした。
 そう、ここを去った時とは、状況が全く違う。自分たちがとやかく言えるような、事柄ではないのだ。
「ああ。もちろん、ゆっくり考えてくれ」
「ありがとうございまーす」
 そういうと、エネルは、三人に背中を向け、部屋を出て行く。エドワードはそれを見送るしか、なかった。

「アルは賛成なんだよな」
「僕が提案したんだ。エネル氏なら、可能なんじゃないか、と。様々な分野で、人材が育っていないという貴方の指摘を受け、それを育てることも今後必要なんじゃないか、と。そこで、いい人材が消えている事実を思い出してね」
「はっ、いっそ、軍なんて消えちまえ」
「ええ、それでもいいんですけどね」
 アルフォンスが、ちらり、と大総統を見た。
「いい人材がきえ、のうのうと裏を操って、今後私を脅かすことのないように、悪い人材というものを潰しておく必要がある。軍が消えるのはその後だ」
「それって、何年計画?」
「三十年だな」
「げぇっ!オレ、初老じゃん」
「少将、その言葉はエンリョしたほうがよいかと。大総統なんて、かなりのご高齢です」
「だはは。ホントだ」
「うるさいぞ、おまえら!」
「うるさいのなら、もうかえりまーす。これだけの為に、召喚するのもったいないから、電話で済ませてくれや。じゃあ。――おーい、マリアン。近くのケーキ屋寄ってこーぜー」
 歩きながら、廊下で待機していたマリアンを呼び、二人は出ていってしまった。

「…アルフォンス。おまえは、エネル氏がこの話を受けると思うか?」
「思いますよ。そして、彼が相談する相手も、賛成すると思います」
「何故だ?」
「消化不良だったからですよ。彼の中で、現状に甘んじているなんて、許せないものがあると思います」
「しかし、ヤツには今までなかった“家族”というものができてしまった」
「はは、何を言ってるんです、大総統。彼は、ずっと背中に“家族”を背負ってましたよ。ただそれが、二つになっただけです。だからこそ、その目に焔が宿るんでしょう?」
「…」
 ロイは、息を吐いて、
「なるほど」
 と、呟いた。


「オレはヤだけどな。エイジやソルの気持ちを考えると、またあんな危ない世界に戻るなんて、嫌だ」
「その世界に堂々といるのは、誰だよ」
「…」
 ため息交じりにアルフォンスにそういわれて、エドワードは、言い返せなかった。
「兄さんだって、軍の狗に成り下がった。それは、誰のためだった?」
「っ!だけど、エネルとは立場が違う!エネルは軍にいなくても、家族を守れる!」
「彼のなかで、消化不良な部分があったと僕は思う。そして、なにより、それを決めるのは兄さんじゃない」
「わかってるけどよ〜」
「僕だって、兄さんにとって、エネルさんやエイジさんがどれだけ大切な存在かは理解してるつもりだよ。友達というカテゴリの中で。そして、二人の幸せを誰よりも願ってるのも知っている」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ