中央編E

□ 輪廻転生
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「酷い、顔だな、エドワード」
 泣きはらした目で、機の前に座っているエドワードに、ロイはため息をつきました。
「…」
 それでも、ギーバタン、とゆっくりだが、機が動いていました。ですが、表情は暗く、話もせず、ただ、涙だけを浮かばせていたのでした。

 そんな姿を毎日見ては、ロイも可哀想に思えてきて、二人に伝えたのでした。
「一年に一度だけ、会わせてやる。ただし、仕事をきちんとこなした場合のみだ」
「…本当か?」
「ああ」
 そこで、エドワードは、きりりと顔を引き締めて、機を織る仕事をはりきるようになりました。それは、牛飼いのアルフォンスも同様でした。

 そして、離れ離れになって、初めて会う日――
「アル!」
 がしっとアルフォンスに抱きつくと、アルフォンスもぎゅっとエドワードを抱きしめ、二人はしばし抱きあったまま、動きませんでした。
「っ、会いたかった」
「僕も…!」
 二人は、今までの時間を埋めるかのように、抱きしめ合っていたときです。耳元で、アルフォンスが、囁きます。
「いい考えがあるんです、エドワードさん」
「いい考え?」
「もう、僕たちが離れ離れにならない方法です」
「え――!?」
 

 そして、その日の別れの時間がきました。ロイが引きはがすように、エドワードを連れて帰り、アルフォンスも名残惜しむように、エドワードを見送りました。
 また、来年――と、悲しい言葉が天の川に響き、エドワードの涙がポロポロと落ちました。


 その数カ月が経ったころ――
「どうした、エドワード。顔色が悪いな。仕事を休んだらどうだ」
「いや、納期が迫ってるし。大丈夫だって」
 そういいつつ、エドワードは「うっ」と、口をおさえ、裏の洗面所まで走っていってしまいました。
「おまえ、まさか…!」
 ロイの言葉に、エドワードは密かに笑みを浮かべ、
「まさかって、なに。最近体調が悪くって」
「…!医者だ!医者に行け!」
 そうして、連れられたところで、

「おめでた、ですねェ」
 と、医者に言われて「なにー!?」とロイが叫んだが、エドワードは口角を釣り上げました。

「お父さんは、貴方ですか?」
 と、医者がロイに尋ねると、
「ありえねェ!!もっとカッコイイやつ!」
「あたりまえだ!私は、こんなちっこいヤツ、相手にせん!!」
 と同時に叫んでしまいました。
「まあ、ともかく。お父さんと二人で、よく話しあって下さいね」
 と、医者に言われたのでした。

「…まさか、子どもの両親を離れ離れにするわけねェよなぁ?」
 にやにやと笑ったエドワードに、ロイは「貴様っ…!」と、憤りを隠せません。
「でも、この子に、罪はねェもん」
「くっ…!」
 悔しそうに顔をゆがめたロイでしたが、
「わかった。おまえらを一緒にしよう。ただし、仕事もちゃんとするように!」
「マジで!?やったっ!!」

 …こうして、二人は一年に一度ではなく、一生共に暮らすこととなりました。そして、二人の一緒に居たいという願いが、通じて、何年、何十年、何百年と…



「アル!今年の七夕のお願い、何にする?」
「今年も同じ。兄さんとずっとずっとずぅ〜っと一緒にいられますように。しかないけど」
「うん、オレも同じ!」
 そんな、にかっと笑った笑顔に、アルフォンスもふわり、と頬笑んだ。
 そんな兄の笑みは、星の瞬きより、強く、美しいと、アルフォンスは思う。

 ずっと昔の自分たちが、願ったことなど、魂でしか覚えていないが。



おわり☆彡
 はい、ちゃっかり子ども作って、それでも足りずに、後世でも一緒に居たくて兄弟になった二人♪
 某アナウンサー姉妹が、すっごく仲良なのは、前世で恋人同士で、後世も一緒に居たいと願ったからって、占い師が言ったって、昔テレビでやってたの。って、どっかでこのネタつかったっぽいけどね^_^;
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