中央編E
□中央編130 怪談より寒いモノ
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そして、四人になったパーティは、シャワー室へと向かった。
薄暗い廊下を通り、そして、シャワー室も真っ暗だ。灯りをつけて、赤い水が出たと言う場所を確認する。
「…」
シャワー個室を見た限りでは、何もわからない。
ユンが、シャワーの蛇口をひねったところ、通常のお湯が出ていた。
「…でませんね」
「でませんね」
「お湯、ですね」
「なにー!?」
それぞれの呟きに、一番納得していないのは、エドワードだ。
「エフィーも見ただろ!?」
「ええ。みましたが――見間違いだったんですかね?」
「ぬああああ!裏切り!」
「そうではないですが。では、明日、また来てみましょう」
「ええええ〜!」
不服そうなエドワードだったが、それがいい、という三人の空気に押されて、仕方なくその日は司令官執務室大部屋へ戻った。
☆
翌朝――
「わ!何事!?」
アルフォンスとエネル二人が、中央司令部司令官執務室横にある大部屋へ足を踏み入れた途端、目を瞬かせた。
ザ・雑魚寝。
と言う表現が合いそうだ。四人が、毛布の敷き詰められた場所に、ごろごろと寝ているのだ。
あろうことか、兄は、服のサイズが合っていないらしく、肩が出ているような状態だし、もちろん、腹も出ている。
「ん…」
吐息のようなものが、漏れて、
「に、にいさんっ!!」
と、大声でさけんだアルフォンス。
その声に、他の三人がはっと跳び起きた。
「あ、お、おはようございます、エルリック大佐」
「おはようございます」
「おはようございます。エルリック大佐、エネル少――いえ、伍長」
「言い直したな」
と、エネルが、ユンを睨んだ。
「スミマセン…」
妹の彼氏という立場なのに、オレより階級上だし、という、なんだかひがんでいるとしか思えない、エネル表情だ。
「ど、どういう状況ですかっ!?なんで、大部屋で雑魚寝!?」
そんな声に、
「うっさい、アル…」
一同は、まだ横になっているエドワードに視線を向けた。起きたのかと思ったが、まだ目を閉じているではないか。
「兄さん?うるさいってどういうこと!」
「ン…」
またも、甘そうな声が聞こえて、そこにいる全員が、思わずアルフォンスを見た。
「そう言う声は、ふたりっきりのときにしてーーーー!!」
「!?」
そんな大声に、やっとエドワードも跳び起きたのだった。
「ふわぁあ…。おはよーアル」
「おはよう、兄さん。――って違う!」
ベッドの上でのいつもの朝の挨拶。それをかわしたが、そんな甘い声をかわす場所ではなかった。司令部の大部屋だ。
思わず、真赤になったのはアルフォンスだけではない。というより、聞いていて恥ずかしい、といった感じか。
「つーか、おまえら、恥ずかしい!」
そう言えるのは、エネルだけだった。
「で、どういう状況?この雑魚寝。兄さんの乱れ具合!」