中央編E
□中央編131 野営訓練
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そんな上官たちの会話を聞きながら、穴を掘っている士官たちは、苦笑しながらも、それを悟られず、穴を掘り続けた。
「なんで、穴を掘るのか――ということは、説明要りませんよね」
「だーっ!エフィー!おまえ、オレを馬鹿にしてんだろ!」
「してませんよ。ただ、士官学校を出てないのは、少将くらいなんで」
「なんだよっ、士官学校でてるからって、偉そうに!」
「いえ、偉くはないですけど。それが普通ですからね」
ぷく〜と頬を膨らませたエドワードだったが、アンダーソン兄が苦笑して、
「君、この穴掘り演習の意味は?」
と、近くにいた士官にたずねる。
「はっ!この穴は、自分の身を守る場所でもあり、狙撃する場所でもあります!」
と、敬礼して答えたので、エドワードは、それを聞きながら「しってるし」と口を尖らせた。
「…で、何時間かかった?」
そこには、大きな穴があいている。人ひとり、入れそうなくらいの大きさだ。
「三時間、くらいですかね」
そこで、エドワードが、
「でええっ!マジで!?すっげぇ」
そういいつつ、横で、エドワードが両手をパン!士官が三時間ほど掘った穴を、一瞬であけてしまったのだ。
「これくらいか?」
そう、純粋に笑ったエドワードに、そこにいた一同は、真っ青になる。士官なんて、今にも倒れそうだ。
「…少将じゃなかったら、殴ってましたよ」
アンダーソン弟の言葉に、ユンもアンダーソン兄も真っ青のまま何も言えない。
「やっぱ、この人、士官学校必要なかったんですね」
「ええ…ついでに、筋肉もいりませんね」
ユンとアンダーソン兄の会話に、アンダーソン弟は、
「これは、かえって、士官たちにマイナスなんで、手で掘ってください。ほら」
シャベルを渡したアンダーソン弟に、ユンとアンダーソン兄は「つェえ」と密かに思っていた。
「そっか。そうだよな」
と、素直にそれを受け取ったエドワードは、シャベルを持って、穴を掘りだしたのだった。
…一時間後、
「飽きた…」
と言って、座りこんだエドワードが掘った穴は、B号が隠れられるほどの大きさだった。
「まぁ、その筋力じゃあ、期待はしてませんけど」
そう言い放ったのは、もちろん、アンダーソン弟だった。
「そろそろ食事にします」
そういって、士官たちに食事を配り始めたアンダーソン弟は、エドワードにも食事を配る。
士官たちが、座った場所に、エドワードは、違和感を覚え――
「ちょっと、オレ言ってもいい?」
と、ここで一番位が高いはずのエドワードが、遠慮気味に言うので、アンダーソン兄弟とユンも「ええ」と言いながら、それを聞くことに。
「オレ、こういう演習の経験ねェけどさ。普通に考えて、おまえら、全員、敵から丸見えだろ?ちゃんと考えて、食事しねェと!何のための演習だ!?」
そう叫ぶと、士官たちは、はっとして、おのおの、木や草むらに隠れて食事を始めた。
「うん、たしかに、みんな、なまってるかもな」
「…まともなことを言って下さって、ビックリしました」
アンダーソン弟の言葉に、アンダーソン兄とユンが頷いたので、
「おまえら、バカにしてんだろ!オレだって、わかるぞ、これくらい!」
「ですよねー」
と、笑っていた。
「つーか、危機感ないことがわかったな。中央司令部、のんびりしずぎ」
「ええ、今後にもいろいろと考え直す必要ありますね」
アンダーソン兄の言葉に、「うん。その辺りは、ハークにまかす」と言われ、「え」と青くなったアンダーソン兄だった。
「あとさ、この食事のカロリーは大丈夫か」
「と、申されますと?」
「量がすくなく感じるけど、ハードな訓練に似合った食事なのか?」
「一食に、1100カロリーはあるかと思います」
「そっか。ならいいな」
「少将、食事終了後、すぐに斥候演習を行いますが、少将も参加されますか?敵役は、私とアンダーソン大佐、他数名で行いますが」
そう、アンダーソン弟に言われて、エドワードは、
「あたりまえ」
「…少将、匍匐前進できますか?第五匍匐前進とか」