中央編E

□中央編 行きたかった夏まつり
2ページ/2ページ

 エイジがソルを抱っこして、エネルと夏まつりの会場に集まった時、きゃぴきゃぴと女性たちの声が聞こえ、自然に目がいってしまった。その中心には、大総統秘書官が、苦笑して、たっていた。
「あれ、アルじゃん。あいつ、何してんだ?エドほっぽって…」
「連絡行ってないんですかね」
 そう思ったエイジとエネルは、アルフォンスに近づいた。

「あ、エイジさん、エネル伍長!」
 助かった、とばかりに、アルフォンスがこちらに向かってきて、囲っていた女性たちも、視線をエネルたちに向けた。浴衣とかいう異国の服を着ているアルフォンスが、またカッコイイと評判らしい。
「おまえ、何やってんだ。エドは」
「兄は、今日は司令部から、仕事で出られないって…」
「はあ?何言ってんだ。さっき、エド、診療所に来たぞ。司令部から直で、運ばれて、熱が40度近くあったって」
「――!」
 アルフォンスが目を見開いたのを、エネルとエイジは見た。
「な…!」
 初めて聞いたのか、アルフォンスは咄嗟に護衛兵に守られている大総統に走り込み、頭を下げている。
 大総統も、メンドクサそうに、だけど笑って、しっしと犬を追っ払うようなしぐさをしていた。

「エイジさん、エネル伍長、失礼します!」
 そういって、マッハのごとく、走り去っていった。

「すげぇ早ェ」
「ホントですね。連絡、取れなかったんですかね」
「だろうな」


「あ〜なんか、久しぶりに、しんどい、かも」
 熱には強いつもりだったけど…これってもしかして、歳だからってヤツか?
 ちくしょーまだ、二十代だぞ。
 三十代になったら、オレどーなるんだ。と、思いながら、目を閉じた。水を飲むにも、起き上がりたくない。
 B号は、枕元に丸くなって眠ってくれていたが、点滴はまだ終わらない。
 ドン、ドン、と花火らしき音も聞こえてきた。
 ユン、アリッサと夏まつり行けたかな?エネルたちと鉢合わせて、なんかビミョーになってると面白いなぁ…。
 無能は、クレアたちと楽しんでるんだろうか。
アンダーソンたちは、司令部か?
パン屋の明かりは消されていたから、きっと、イーリィとエルガーも行っただろうな。
 
…そりゃ、自分だって行きたかったけど。
 熱がなかったら、仕事だし。司令部から、花火が見られればいいな、とは思ってたけど、本当は浴衣きて、アルといっぱいしゃべって、夜店の遊びを楽しんで、何か食べて、笑って、楽しい夜にしたかったけど。
 今頃、アルは、女性はべらして、苦笑してることだろう。そんな顔も見たかった。
 自分だって、浴衣きたかったし。

 …つまんねェのな。
「はぁ…」
 そこで、パタン、と一階にある玄関扉の音がして、B号がぴくり、と耳を動かした。すぐに、パタパタと駆けあがる音が聞こえ、寝室の扉が勢いよく開かれた。
「に、兄さん!熱だって!?大丈夫!?薬は!?」
 浴衣のままベッドに近づき、額を触わりつつ、まっすぐにエドワードを見てくるアルフォンス。
「おまえ、大総統のお守りは?」
「エネル伍長たちがきてて、兄さんが熱だって言ってたから、飛んで帰ってきたんだよ!風邪引いたの!?」
「みたいだな」
「ボクが、来たからもう、安心して寝てね」
「なんだ、それ。おまえいなくても眠れるから、おまえは仕事にもどれ」
「ありえない。あんなの仕事じゃないし。兄さんも、ホントは行きたかったんでしょ」
 そう優しく笑ったアルフォンスに、エドワードは小さく頷いた。子どもっぽい仕草に、愛しさが募る。
「僕も兄さんと行きたかったよ。浴衣着てさ、一緒に歩きたかったね」
「うん…」
「来年もあるよ。今年は、こうして、二人でいよう。いつもと変わらないけど、浴衣は治ってからでも着られるしね」
「…うん。二人で、着るんだからな」
「うん。兄さんの浴衣姿も、好きだよ。こうして、熱でぼんやりとした表情になるのも、好きだったり」
「おまえ、ひでェ…」
「ふふ。でも、笑顔が一番すきだから、兄さんが笑顔になることを、いっぱいするから。今日は、それを楽しみに、休んでね」
「ん…」
 そう頷いたエドワードに、アルフォンスも頬笑む。
 強い兄さんが、弱るこのカンジがキライじゃなかったりする。言うと、きっと嫌がるので、言わないけど。
 
 …来年は、一緒に行こうね。


 その夜、エドワードの夢は、浴衣を来た自分とアルフォンスが、一緒に歩いてる夢。それだけだったが、目が覚めた時、アルフォンスが傍らで眠っていて、幸せが増したのだった。



 こういう話をかいて、いつも思うんですけど…一般的な夏まつりってどんなカンジなんでしょうか…^_^;夏まつり的なものが、32回ある町なんですけどー…(笑)
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ