中央編E

□中央編132 ゲリラ豪雨
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「いいから、食ってみろ!美味いから!」
 そう進められて、スプーンにすくって口に入れると、
「おいしい…」
「だろー?もう、夏はかき氷が一番だぜ!中央では、こうして店で食べられるけど、東方にはなくてさー」
「へー」
 その間も、サクサクと食べ進めるアンダーソン弟に、満足しているのはエドワードだ。
「オレのミルクがたっぷりかかってるのもうまいぜ」
「……。」
 アンダーソン弟が、周りをきょろきょろしたので、
「なんだよ?」
「いえ、聞きようによっては、なんとなく危険な香りが。思わず貴方の弟を探してしまいました」
「なんでアルがこんなトコにいるんだ」
 そういいながら、
「ほら、あーん」
 と、自分のかき氷をすくって、アンダーソン弟にむけた。
「じ、自分で食べますから!」
 と、慌てたアンダーソン弟は、エドワードのイチゴ味も口に入れる。
「ええ、美味しいですね」
「なっ。夏はやっぱコレだよな」
 そう幸せそうに氷をくちに運ぶエドワードに、アンダーソン弟はくすり、と笑みを浮かべた。
 子どもっぽい顔をしている。

 二人が、かき氷を食べ終わると、
「ここはオレがおごってやる。と、言ってたけど、財布のなかカラでした」
 エドワードが愛用しているらしき、ガマ口財布の中身を見せて、アンダーソン弟は、肩を落とす。
「少将階級が、1センズも持ってないなんて…」
「ごめーん。お金の管理は、もっぱらアルなんで」
「小遣い貰えてない夫みたいですね」
「それに近いかも」
 そう笑ったエドワードに、アンダーソン弟は、仕方ないな、といったふうで、財布を取り出し、支払いを終えたのだった。


 その帰り、
「さて、司令部に帰りますよ」
「ええ〜」
「当然です」
「しょうがねェなぁ…」
 ぶつくさいいながら、司令部の方へ足を向けた時、先ほどまで、夏の日差しが燦々と照り輝いていた空が、暗くなっていた。
 ゴロゴロゴロ、ピカ!と稲妻が走った瞬間
 ザアアア!と一気に降り注ぐ。
「うわあああ!」
 雨宿りしようにも、なかなか二人入れそうな場所もなく、仕方なく二人は、走って、司令部に戻ったのだった。


「のわぁあああ!全身ずぶぬれ!」
 中央司令部の受付係の士官が、
「少将、中佐、大丈夫ですか」
 と、タオルを渡してくれた。
「わりー。いきなり降られてさぁ」
 エドワードは、普段ジャケットを着ていない。アンダーの薄い水色のワイシャツを着ているのだが――
 アンダーソン弟は、どきり、とした。
 まさか、アンダーのワイシャツの中に、Tシャツやタンクトップなど着ていないのでは!?
 水に濡れたワイシャツってだけで、卑猥に見えてしまう自分も思考がアブないのかもしれないが、自分や屈強な体躯の軍人だったら、そこまで思わないのに、彼、エドワード・エルリックだからこそ、そう思ってしまう。

「しょ、少将!執務室に帰りましょう!」
 そう、エドワードの背中を押したのだが、
「シャワー浴びたいかも〜」
 なんてグズグズしている。
「ああもう、だったら、さっさと浴びて下さい!着替えはあるんですか!?」
「ないから、買ってきて〜」
「わかりました!さっさとシャワー行ってくださいね!」
 そう言い放つと、アンダーソン弟は自分も濡れているにも関わらず、購買へと走って行く。そして、選ぶ暇なく、手にして、支払い、すぐさまシャワー室へと入ろうとする。
 ばたばたばた!と、着替えもそこそこに逃げてくる士官たちとすれ違った。
「どうしたんです」
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