中央編E
□中央編133 君の助け
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「あのねー」
そういいつつ、サンドイッチを渡すと、エドワードが、
「野菜たっぷりだな」
「トマトは大総統印だよ」
「なんだそれ」
「リザさんの家庭菜園より」
「ええっ?リザさん、家庭菜園とかしそうにないのに…」
「うん、イメージはないよね〜」
「絶対、銃磨いてて、部屋も何もないってカンジがするんだけど」
「確かに」
そんな会話を聞いていた、大総統府の九名は、蒼ざめた。
大総統夫人に対して、そんなこと言っていいものか、と。
「ん、でもうまい」
「でしょ?」
笑いながらランチを楽しんでいる、そのエルリック兄弟の雰囲気に、大総統府の九名も和んでしまいそうになる。
「アンダーソン大佐、中佐、ユン少尉は?」
「ランチしてる。おーい、マリアンもどうだー?」
どこにいるんだ、と一同はきょろきょろした時、木が揺れて現れた長剣を背負った女性が現れた。
「ありがとうございます☆」
「最近、ジンデル中尉は、隠れてるの?」
「ええ。監視と護衛を強化といえばいいでしょうか」
「…そうですか」
そこまで、兄が危ないのか、とアルフォンスは思った。そこまで、ショウ=テイラー大将が働きかけてるのか、と。
「直接的なことはないから、とりあえずは大丈夫だって。心配すんな」
にかっと笑ったエドワードに、アルフォンスは一抹の不安を感じながらも、頷いた。
☆
翌日――
「私がいながら、少将を逃がすなんて…!」
そう、右腕をだらり、と垂れ下がったような状態でやってきたマリアンに、アンダーソン兄弟は目を見開いた。
「どういうことです!?」
「今は、ユン少尉と行動していたはず…!」
「司令部内で消えたんです。サボりとかではありません。私が、三人を相手にしている間に、少将を見逃しました!探して下さい!」
「――っ」
大っぴらに探せ、といったところで、ショウ=テイラーが関係しているかもしれない今、それは非常に危険が増す。
かといって、仲間が少なすぎる。
「大総統府に連絡をしてくれ、エフィー」
「わかった」
アンダーソン兄から頼まれ、アンダーソン弟はすぐさま大総統府へと向かった。
「中尉は、治療を」
「いえ、私は大丈夫です」
「貴方は、貴重な戦力です!今すぐ、医務室――いえ、エイジ診療所へ向かってください」
「ですが、今、アンダーソン大佐しかいないここでは…」
「大丈夫です。なんとか、します」
その表情にマリアンは信じることにし、すぐに走り出した。
一人になったアンダーソン兄は、やみくもに探したところで見つかるはずがない、と思った。
ここは、冷静に、ショウ=テイラーの持つ土地を洗うなど、する必要がある。司令部内にいないとも言えない…。
やはり戦力が欲しい。自分では、東方司令部を動かすこともできないし、時間がない。
アンダーソン兄は、受話器を上げた。
――ジリリリ、ジリリリ
『…はい。バー・ソノラ』
ダルそうな声が聞こえ、アンダーソン兄は、
「貴方の戦力が必要なんです…!」
『…真昼間から、バーテンダーに何ができるというのです』
「少将を探して下さい…!司令部内にいるはずなのですが、ココが一番危ない…!」
『…どういうことです』
電話の相手の声色が、わずかに変化した。