未来軍部11

□なあ、アル。
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「兄を、殺せるのは僕だけです。その意味を貴方にはわかりますか」
「貴様も恨んでいるのね。彼を」
 ボイルが不適に笑ったので、アルフォンスも口角を吊り上げた。
「だから貴方は、怖がりなんですよ」
「っ!」
 ぎりりとボイルが唇を噛み締めた。
「貴様!」
 ボイルが撃った銃弾は、アルフォンスの頬を掠め、壁に当たって、飾ってあった絵がガシャン、と音をたてて落ちた。
「恐れ、憎しみで、人を殺そうとしても虚しいだけです。全てを“消す”には、傍にいて愛すればいいんですよ」

 そういうと、アルフォンスは踵を返して、部屋を出て行った。ボイルは、どさ、と疲れたように椅子に座り込む。
「なんだ、あの兄弟は…!」


 
 廊下に出ると、エドワードがこちらを向いていた。
「銃声がした」
「撃たれた」
 そうアルフォンスが苦笑すると、左頬からの血がつつ、と流れていることに気がつく。
「ば、バカ!」
 エドワードは、慌ててアルフォンスの頬をぬぐう。
「いいよ、兄さん。貴方の手が、血に塗れてしまう」
 そっと頬に置いた兄の右手を、アルフォンスはそっと触れた。
「オレの右手は、もう真っ赤になっているだろう。罪で、どうしようもない」
「まっしろで、きれいだけど」
 暖かい、右手。

 ああ、そうか…。
 だから、彼、ロイ・マスタング大将は、僕を秘書官選んだんだ。
 僕を、自分の傍に置くことで、兄が安堵することをわかっていて、そしてさらに、『脅迫』にだって利用できる。
 体のいい人質。だから、兄は、言うことを聞くしかない。
 もちろん、兄は彼に対して、絶対なる信頼があるからこそ、僕を預けるのだろうけど。

 自分の頬に触れるエドワードの手を、そっと握って、アルフォンスはまっすぐに兄を見据えた。
 貴方は、いつまでたっても、『兄さん』だ。

「僕は、兄さんに笑って欲しい」
 血が、二人の手のひらを真っ赤に染めている。
 その繋がりを感じ、二人はまっすぐに眼光を絡めた。

「オレは、おまえとずっと笑っていたいよ」
 微妙な言葉の違い。
 だけど、兄が笑えば弟も笑う。
 だから、それは、ぴたりと同じものを描いている。

「そうだね。だから、笑っていようね」



 そう、言ったのに――
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